約 883,798 件
https://w.atwiki.jp/rentaltoho/pages/34.html
レイム 基本データ 名称 Eれいむ 親 レイナ タイプ1 ノーマル タイプ2 ひこう 特性 はくれいのみこ 性格 しんちょう 技 技1 むそうてんせい 技2 どくどく 技3 リフレクター 技4 よめしゅぎょう 能力値 HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早さ 191 120 129 89 136 91
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3140.html
『てのりれいむ』 13KB 愛で 小ネタ 独自設定 思いつき 何かとストレスを感じることの多い現代社会。 ふと癒しを求めてなんとなく覗くだけのつもりで入ったペットショップの一角に、珍しいものを見つけ、 値段も手ごろだったのでついつい購入してしまった… 家に帰り小さな厚紙で出来た箱を開けると、中から出てきたのは一匹のゆっくりだ。 「ゆぅ~!」 彼女はゆっくりれいむ、といっても店員いわく遺伝子改良を受けた自然界には居ない人口品種で、 なんと胴付きにもかかわらず手乗りサイズなのだ。 品種名は、そのまんまでミニ胴付きゆっくりというそうだ。 「ゆっゆっ」 私がれいむの前に手を差し出すと、れいむはちっちゃな腕を伸ばして私の指に絡め、 全身を使って手のひらに這い上がり、立ち上がって満面の笑みを浮かべる。 サイズは丁度つま先から頭まで含めてジャンガリアンハムスター程度だろうか、これでもすでに成体らしい。 店員の説明によると、ちいさすぎる体格のため、頭のサイズが赤ちゃんゆっくり程度しかなく、頭はそれほどよくないとか。 「ゆ!」 どうやら言葉も満足に話すことは出来ないらしい、けれど異常行動などがあるわけではない。 まぁ言ってしまえばおしゃべりの出来ないゆっくりといった程度で、今のところ特に問題は感じなかった。 私は以前に買っていたハムスター用のケージを取り出し、余っていた床材のチップを敷き詰めてれいむをその中に入れてやった。 れいむは初め、私の手を離れたがらなかったが、私が次々と設置していくケージ用の内装に気をとられ、目を輝かせ始める。 やはり基本は小屋だろう、れいむには少し小さめかもしれないが、あれば何か使ってくれるかもしれないと思い、埃を落として中に入れる。 次に水ボトル、よく見るとカビがこびり付いていたので念入りに洗ってから水をいれ、外を拭いてから設置する。 これには特に興味を示したようで、ぺたぺたと触ってなにやら真剣みを帯びた表情をしていた。 だがボールの部分に手を突っ込んでしまい、水が溢れ出して服がびちょぬれになり、べそをかきはじめてしまった。 「なにやってるんだか、ほら、ここをこうするんだよ」 ティッシュを使ってれいむについた水をとってやりながら、頭を指で掴み、ボール部分を舐めてみるように促した。 しかしどうも勝手が分からないらしく、うまくいったかと思っても今度は顔に水をぶちまけてしまい、再び泣き出す始末。 どうやらコレはれいむには合わないらしい、目を離して危険が生じるかもしれないので別の手段を捜すことにして取り外した。 れいむの身体を乾かしてやってケージに戻す、さて完成してしまった、これからどうしたものか。 遊び道具のようなものは、大体ハムスターの歯型がついていたりしたので捨ててしまっていた。 れいむはケージの枠を両手で掴んで、まるで刑務所内にいるような仕草でこちらをじっと見ていたが、 私がリアクションを取らないとわかると飽きたのか、一人遊びを始めた。 足元にあるチップを掴んで口に入れ、食べれないと分かると吐き出し、両手でチップを抱えてぽいぽいと投げる。 どうもそれが気に入ったらしい、水辺で遊ぶ少女のように、ばっさばっさとチップを飛ばし、山を作っていく。 出来た山に突進し、もふんと衝撃が吸収されて、細い手足がチップの山に埋まってしまう。 そのままごろごろと転がって、感触を確かめると今度は小屋に歩いていき、中に入って顔を出す。 入り口は顔の大きなれいむには狭めだが中には余裕があったらしい、近くにあるチップをかき集めて中に運び、 ふんわりと敷き詰められたところに頭から入り込み、どうもそこで落ち着いたのか、入り口から足だけだして固まってしまった。 「ゆくり~」 小屋の中からくぐもった声が聞こえる、ゆっくり出来ているらしい。 ふと、れいむの動作に夢中になってしまっている自分に気付く。 どうも私はやはりこういう小動物に弱いらしい、正直見ていて飽きない。 しかしいつまでも眺めているわけにも行かない、ようやく思い出したが食べ物を何も用意してやってなかった。 れいむが入っていた箱には、小さな小冊子が入っていて、習性の紹介や食べる物などの飼い方が簡単に記載されていた。 それを読むと基本的には何でも食べるらしい、ただ味の濃いものはよくないらしい。 甘いものを与えすぎると舌が慣れてしまいそれ以外のものを食べなくなってしまうとも書いてあった、気をつけよう。 冷蔵庫を漁ると白菜くらいしかペットが食べれそうなものは入っていなかった。 私はそれを小さくちぎってれいむのケージに放り込んだ。 するとそれに気付いたれいむは小屋から這い出して、白菜に近づいていく。 顔を近づけて匂いを嗅ぐような動作をした後、ちっちゃな両手で端を掴んで、白菜の端っこにがぶりとかぶりついた。 私の小指の先ほどの大きさを二回三回と口に含み、ほっぺを膨らませながらもぐもぐと租借したあと、ごくりと飲み込み、ぱっと笑顔を咲かす。 「ゆぅ~ん♪」 どうやらちゃんと食べれたようだ、私はほっと胸をなでおろす。 床のチップを少しどかして固め、スペースを作って、漬物用の小さな皿を二枚置いて一方を食べ物いれ、一方を水入れにしてやった。 水はどんな間違いが起こっても中に入っておぼれたりしないように、浅くしか入れていない。 補充が少々面倒だが、このくらいのほうが手をかけてやれて丁度良いだろう。 食べ物、水、寝床、大体必要な物はそろえたはず、問題があれば起こり次第解決すればいいだろうと、目を離してテレビをつける。 ニュースや天気予報、たいして面白くないバラエティ番組にお堅い内容のドラマ。 あれでもないこれでもない、とチャンネルを動かしていたら、ケージがかしゃかしゃと音を立てる。 「ゆぅ~ん!ゆうーん!」 何事かとそちらを見ると、れいむが瞳をうるうるとさせてこっちを見て何かを訴えている。 ケージの中を覗いてみても特に問題は感じない、私が近寄ると、ケージの入り口付近に移動し再びケージの枠を掴んでかしゃかしゃとやり始めた。 どうやら外に出たいらしい、しょうがないと私がケージを開けてやると手のひらの上にぴょんと飛び乗って、座り込んでしまった。 「しょうがないね、まったく」 私はそのままれいむを手のひらに乗せてテレビ観賞をすることにした。 しばらくすると突然れいむがむくりと起き上がり、なにやらそわそわとし始める。 「ん~?どした?」 私が指で顎の辺りをぷにぷにとつついてやっても、じゃれようとせずあたりを見回す。 やがてぶるぶると身体を震わせて、突然れいむはスカートを捲り上げてしゃがんだ。 可愛いおしりが顔をだして、そのままいわゆるうんちポーズで固まるれいむ。 「あれ?ま、まさか」 「う~んう~んっ」 目をぎゅっと瞑って力みはじめるれいむ、よく見るとおしりの間から黒い塊が顔をのぞかせていた。 「あらっ、本当かいまったく、ティッシュティッシュ…」 素早くそばに置いてあるティッシュを引き出して手のひらとれいむのおしりの間に滑り込ませると、なんとか手に直接付着することは免れた。 汚いなと思ったが、所詮これは餡子の塊、匂いも特にしなかった。 しかしれいむにとっては自分の排泄物は臭いのか、嫌そうな顔をしながらティッシュの端を掴んでうんうんを隠してしまう。 そのまま捨てようかとも思ったが、そういえばあのケージの中にトイレを作っていないことを思い出す。 戸棚からもう一枚漬物用の小さな皿を取り出し、それに先ほどれいむがしたうんうんをすりこんだチップを乗せてケージの端っこに入れてやる。 私の思惑通り行けば、これでここをトイレとして認識してくれることだろう。 初めのうちはところかまわず粗相をしてしまうかもしれないが、頭ごなしに怒るのは得策ではない、 きちんと場所を指定してそこを使い続けるように仕向けてやれば自然と覚えるものである。 排泄が終わるとれいむはすっきりしたのか、また私の手のひらの上で丸まり、今度は寝息を立て始めてしまった。 このままケージの中に入れてやろうかとも思ったが、その寝顔があまりに可愛かったのでそのままにしてやることにしてテレビ観賞を続けた。 私が寝るためにれいむを起こしてケージの入り口に手をそえ、入るようにと指示する。 れいむは目をこすりながら素直にしたがって、自分の家に向かった。 しかしその途中、再びれいむはあの時のようにそわそわとし始める。 しばらくきょろきょろとした後、私の思ったとおり匂いのする方に走っていき、トイレとして設置した皿の前で立ち止まってスカートをめくる。 そのままれいむは立ったまま力み、少しするとちょろちょろと音を立ててれいむの股間から皿に向けて水が迸った。 「し~~~!」 しーしーがだんだん勢いを失っていき、れいむがぷるぷると身体を震わせる。 終わってスカートを掴んでいた手をぱっと離すと、れいむはやはり匂いが気になるのか、足元のチップを両手で掘り、ばさばさとトイレの上にかけた。 まだ一度なので確信とまでは行かないが、どうやらトイレの場所は把握してくれたらしい、一日目としては上々だ。 私はれいむにお休みの挨拶をして部屋の明かりを消す。 れいむは私にひらひらと手をふっておうちの中に引っ込んでしまった。 私はそれを見届けてから寝室に行き、疲れに身を任せて深い眠りに落ちた。 私とれいむの出会いから数ヶ月、どこで間違ってしまったのだろう、れいむはすっかり生意気に育ってしまった。 「ぷぅ~!」 仕事が疲れて家に帰ると、頬をぷくーと膨らませてれいむが私をにらみつける。 これはご飯を催促しているので、決して私の帰りを歓迎してくれているわけではない。 ケージを開けるとぴょんと飛び出して、テーブルの上で両手を広げてぴょんぴょんと飛び跳ねる。 「ゆぅ~!ぷくー!ぷっきゅ~!」 「はいはい」 れいむは食欲旺盛で、多いかな?と思ったくらいの餌を用意して出かけても、必ず全て平らげてしまう。 逆に食べすぎになってしまうこともあるようなので、私はいつも気をつけて出かける前はギリギリの量しか与えないことにしていた。 今は以前のような野菜くずではなく、きちんとペットショップから買ってきた餌を与えている。 折角帰ってきてコミュニケーションをとる機会なので、スティックタイプの餌を手渡しでやることにした。 「ほーれ、餌だぞ~」 「ゆっ!ゆっ!」 れいむは笑顔一つ見せず、真剣な顔で餌に飛びつこうとする。 私がひょいひょいとちらつかせていると、ついに両手で端を捕まえて、がぶがぶとかじりついてしまった。 「よく食べるなぁ」 みるみるうちに餌が短くなっていく、どんどんと減っていき、ついに私が持っているところまで来て、れいむは勢いあまって私の指にかじりついた。 「いてっ」 と言ってもたいした痛みが走るわけではない、少し強い洗濯ばさみではさまれた程度だろうか。 そのまま持ち上げると、れいむは噛み付きをやめないので身体ごと持ち上がってしまう。 「ゆ~」 しばらくもぐもぐと口を動かした後、私の指から口を離してテーブルの上に落ち、ころころと転がった。 「ゆぅぅ!」 そのことで勝手に腹を立て、れいむは自分でケージの中に入って扉を閉めてしまう。 以前買ってあげたミニ胴つき用のおもちゃで一人遊びを始め、私に甘えるような仕草は殆どしない。 なんだか寂しいような物足りないような気持ちになってしまう。 たとえるならば、子供が反抗期を迎えた親の気持ちに近いのかもしれない。 あの手この手を尽くせばれいむの気を引けないこともないが、仕事で疲れた後はそんな気分にもなれないので、 れいむのケージを適当に眺めたままぼ~っとテレビを見て晩酌をするのがこの頃の日常だ。 私が飼いはじめた頃は本当に開発当初というやつだったらしく、その後一気にブームに火がついて、 今では会社でもうちのペットが~という話題の殆どはこのミニ胴つきの話だった。 やはり普通のゆっくりと違い買うスペースの心配も無く、胴つきだから行動範囲を制限してやれば不慮の事故というやつがおこりにくい。 知能もあまり高くなく、まあ育ち方しだいで生意気だと言ってもたかが知れている程度だ。 それに何と言ってもこの可愛らしい外見が、妖精を飼っているみたいで素敵だと評判になっているらしい。 値段も私が買った時の3倍以上の価格がついてペットショップに並んでいた、世の中分からないものだ。 久しぶりに酒が進んでしまい、アルコールが回ってきて思考が混濁していく。 「ゆ!ゆぅー!」 れいむがケージの中から呼んでいたので、入り口をあけてやるとれいむがひょいと飛び出し、私のほうに何か物を飛ばしてきた。 ころころと転がるそれは怪我が無いように設計された軽いスチロール素材の『ミニ陰陽玉』だ。 ペットショップにれいむを連れて行ったときにせがまれて買ってやったやつと記憶している。 れいむを見ると、期待したような目を向けてくるので、人差し指でボールをれいむのほうにぴんと弾いてやる。 軌道がすこしそれてしまったが、れいむはそれを追いかけて飛びついてキャッチし、またこちらに投げ返してきた。 ピンッ、キャッチ、投げ返されて、ピンッ、キャッチ、投げ返される。 ある時少し強く弾きすぎて、れいむはそれを受けきれず、頭に強くヒットしてしまった。 「ゆぅ~…ひっ…ゆぇぇ~~~~~」 れいむは痛かったのか、大声をあげて泣き出してしまう。 「あぁ、ごめんごめん」 私がれいむを引き寄せて頭を撫でてやると、少し泣き止んで私の手に頬ずりをしてきた。 たしかにれいむはこの頃以前に比べると生意気になった。 だがふと思うと、もしかするとそれは私にも責任があったのだろう。 元々あまりペットを世話してやるような余裕はあまり無かったのだが、れいむを衝動買いして、 初めのうちはちゃんと世話をしていても、やはりこの頃疲れて帰って、餌をやったらそのまま就寝、ということも少なくなかった気がする。 そう考えると、ずいぶん寂しい思いをさせてやってしまったのかもしれない。 ベソをかくれいむを手のひらですくって、もう一方の手で優しく何度も何度も撫でてやると、 ふとれいむは以前のような可愛らしい笑顔の華を咲かせてくれた。 それを見ると私も久しぶりになんだか嬉しくなってしまって、胸の奥がむずむずするような、優しい気持ちになれるのを感じていた。 大事にしてやろう。 当たり前のことだが、もう一度素直にそう思うことが出来た。 これからも私とれいむの付き合いは長そうだ。 おしまい。 --------------------------------------------- う~ん、なんだか中途半端でしょうか…たいした物語も無いただの愛で、 日常的な場面だからこそ難しいなと感じてしまいます。 ばや汁でした。 いつも多数のご意見ご感想ありがとうございます! この作品へのご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せください。 個人用感想スレ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/ 今までの作品 anko1748 かみさま anko1830-1831 とくべつ anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん anko1847 しろくろ anko1869 ぬくもり anko1896 いぢめて anko1906 どうぐ・おかえし anko1911 さくや・いぢめて おまけ anko1915 ゆなほ anko1939 たなばた anko1943 わけあり anko1959 続ゆなほ anko1965 わたしは anko1983 はこ anko2001 でぃーおー anko2007 ゆんりつせん anko2023 あるむれ anko2068 おしかけ anko2110 とおりま anko2111 おもちゃ anko2112 ぼくとペット anko2223 まちかどで anko2241 かいゆ anko2304 ぼうけん anko2332 とかいは anko2349 たたかい anko2369 ゆっくぢ anko2413 せんたく anko2427 ぶろてん anko2489 あこがれ 前編 anko2588 ひとりぼっちのまりさ anko2807 母の音 anko2887 僕とれいむと秘密基地 anko2949 野良れいむ anko3047 ぶろてん おまけ anko3058 実験01 クッキーボタン anko3067 わけあり おまけ anko3078 げすまりさ 餡小話では消えてしまった作品も多数ありますので、過去作を読みたいと思っていただけた方は ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー-ばや汁ページ- http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/395.html をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1463.html
先日自宅にれいむが届いた 念願叶ってという訳では無いが単身赴任とはやはり寂しい物だ しかめっつらで宅配業者とやりとりしていた私だったが、心はゆっくりの想像でいっぱいだった 「ゆっくいしちぇいってね!ゆっくいしちぇいってね!」 まだ成体ではないので発音が不完全なのだろう、箱から飛び出したれいむはそんな風に喋った 『こんにちはれいむ、今日からおじさんとゆっくりしようね?』 そう声をかけられたれいむは目を煌めかせて答えた 「ゆっくいちゅるよ!きょうからなかよくゆっくいちようね!」 あまりの可愛さにポケットに手が伸びたがぐっと堪える 『れいむ、これから仲良くゆっくりできるようにいくつか約束しよう』 「おなかちゅいたからごはんちゃべたいな!やくそくはあちょがいい!」 『駄目だよ、言うことを聞かないれいむにはご飯をあげない。おじさんの言うことはよく聞く事、これが一つめだよ』 「う~………わかっちゃよ!」 少し悩んだ素振りを見せたがわかってくれたようだった、れいむはいい子だ 『いい子のれいむにはご褒美をあげようね』 そう言ってポケットに手を伸ばした私だったが目当ての物はそこに無かった 「れいむはあまいものがいいなぁ!」 『ごめんね、ご褒美を冷蔵庫に忘れたみたいだから取ってくるよ。この部屋でいい子にして待っててね』 「ゆっくいまちゅよ!いいこのれいむはゆっくいまちゅよ!」 台所から戻るとれいむは鏡の前で跳びはねていた 「きょうからきたれいむだよ!なかよくゆっくいちようね!」 鏡に映る自分を同族と思っているらしい その様子が何だか可笑しく、私に気付いた様子も無かったので、私はしばらくれいむを見ている事にした 「なんちょかいっちぇよ!はやくゆっくいこたえちぇね!」 こうして見ているとゆっくりが人間の言葉を喋っているというのは思い込みなのだと言うのがよくわかる、おそらくあの子達は人間の言葉をなんとなく真似しているだけなのだ 「どうちてなにもいっちぇくれないの?れいむのこときりゃいなの?」 いかん、泣き出してしまった 慌てて行って宥めてやる 『れいむ、これは鏡と言って目の前の物を映してるだけなんだよ。映ってたのは君だし今だっておじさんが映ってるだろ?』 「ゆ?よきゅわきゃんない??」 泣き止んだのはいいが混乱してしまったらしい よく考えると慰めになってない気もするしまあいいだろう それよりもご褒美だ 『いい子のれいむにご褒美だ、ちゃんとお部屋で待ってたから3個あげようね』 そういって包装を解いたチ□ルチョコを差し出すとれいむは夢中になって食べ始めた まだ小さいから少し多過ぎたかもしれないが 「むーしゃ♪むーしゃ♪ちあわせ~!!」 fin かわいいなあ -- 名無しさん (2011-02-17 15 25 49) 赤ちゃんれいむも久しぶりな気がする -- 名無しさん (2011-04-28 14 10 18) こういうの好き -- 名無しさん (2012-12-03 00 46 49) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/126.html
幻想郷のどこにでも居るようなれいむと子供たちが畑を眺められる土手で日向ぼっこしていた。 お昼ご飯を食べるために巣からここまでやって来たが、未だにあり付けていない。 いい加減空腹の限界が近づいていたが母れいむには一つの考えがあった。 ニンゲン早く来ないかな。来たらむしさん食べさせてもらうんだ。れいむの子供をお腹一杯にしてあげたいよ。 「おかーちゃん、おなかすいたよぉ。」 「おいもたべてもいい?」 ほら来た。あの畑のいもを自由に食べられたらどんなに幸せなことだろうか。 でもねあかちゃん、ダメだよニンゲンの畑に勝手に入ったら。 「はーい。」 「がまんちゅるよ…。」 さすが、れいむの子供だ。ちゃんとがまんできてお母さんうれしいよ。 彼女、母れいむはかつて勝手に畑に侵入して芋虫を食べていたらこっぴどく叱られた経験があった。 彼女を叱ったおじさんは、作物が荒らされておらず食べられたのは害虫だけと気づいて、れいむに謝った後に助言してくれた。 「畑に君たちが居ると作物を食べられてるんじゃないかと思ってしまうよ。虫を食べるときは畑の人に言ってからにするんだよ。」 「おじさん、ありがとう!いっぱいむしさんたべるよ!」 「ハハ、そうか。虫ならいくらでも食べてくれよ。」 無人の畑を前にして人間を待っているのはそんな理由だった。 そろそろ覚悟を決めて畑に侵入するか、それとも諦めて他所に行くか、選ぶべきだろうと母れいむが考え出したころ、人間が一人やってきた。 待望の食事にありつける! サッと飛び起き、歩いてきた人間のほうを見てご挨拶。 「こんにちは!ここはお兄さんのはたけ?」 「こんにちは。残念ながら違うんだよ。」 この返答で昼食が更に遠くなったと思い、母も子もうつむく。 「ゆ…ゆゆぅ…」「おなかしゅいた…」 「あー、何か勘違いしてるのかな。この畑は僕のじゃないけど僕の家の畑なんだよ。」 「ほんと!じゃあむしさんたべてもいい?」「むしさんたべたいよぉ」 「ああ本当だ。虫ならいいぞ、ジャンジャン食え。」 どうも昼食は食えそうだと気づいたとたん、パッと顔をあげた母はゆっくりの身体構造が許す限りの速度で畑へと跳ねていった。 畑にたどり着くとあっという間に芋虫を5匹も平らげた彼女は、その段階で自分に近づく人影に気づいた。 「ほら、子供を連れてきたぞ。食事は一家で楽しんだ方が美味いぞ。」 「れいむ、ごはんにむちゅうできづかなかったよ!おにいさんありがとう!」 「ゆー、ありがちょぉー」 地面に置かれた子供たちはそれぞれがおいしい物があると信ずる方向へと散っていったが、 自分の食事を終えた母ゆっくりは、一番小さい子供の為に高いところの餌を取って渡してやりはじめた。 一家でおいしい食事を楽しんだ後、畑の入り口に立っていた人間が一家を呼び集めた。 母はかつて人間に苛められた恐怖を思い出して身構えたが、目の前の人物が呼ぶ理由はどうもそんな事ではないらしいと気づいた為、あっという間に警戒を解いた。 ゆっくりとはいえ、今の自分たちが満腹で動きにくい事ぐらい分かっていたし、その為に彼が悪人ならば直ちに行動に移っているはずだとも考えた。 「君たちに頼みごとがある。聞いてくれるかな?」 「ゆっくりできるの?」 「ある物体がゆっくりできる物かどうか、それを調べて欲しい。」 あるぶったい、ってなんなんだろうなー。そう思いはじめたれいむは己の中の好奇心に支配され始めた。 「もし、ゆっくりできる物だったらそれを君たちにあげるよ。どうだい?」 この言葉でれいむは折れた。 しらべるだけだし、ひょっとするとゆっくりできるものがもらえるなんておとくだよね! 人間についていく事はこの時点で決定された。 彼がゆっくりを抱きかかえたりせず、後ろについてくるよう言ったことがれいむの彼への信用を高めた。 始めは歩いているだけだったのが、いつの間にかゆっくりが歌いながらの行進に変わっていたのはその信用の現われだろう。 彼が畑に行くときは5分掛かったが、帰宅はその3倍掛かってしまった。 子ゆっくりが時々休憩したり、ヒラヒラ飛ぶ蝶に気を取られたりする度に立ち止まるとどの程度時間が掛かるかという例だ。 彼は必要な投資だと思っていたし、想像に花を咲かせる母ゆっくりの話はそれなりに楽しめたから苦とは思っていなかったが。 ニンゲンのおうちってまっすぐじゃないの?そう、れいむが疑問に思いつつ彼に付いていって庭に入ったとき目にした物は木でできた物体だった。 なんだろうこれ?ゆっくりがはいれるおおきさだよね…。もしかして!ゆっくりをとじこめてゆっくりできなくさせるはこかも!やっぱりわるい人だったんだ! でも、ゆっくりをとじこめるにはちょっとひろいよ…ほんとうはなんだろう? 「それはね、ゆっくりのおうちなんだよ。」 「ゆっ!おうち?」 れいむの疑問に答えたのは彼女をここまで連れてきた人間だった。 「ゆっくりのおうちは最高にゆっくりできなきゃいけないよね?」 「そうだよ!おうちはさいこうのゆっくりポイントだよ!」 「うん、だから君たちにこのおうちがゆっくりできるか調べて欲しいんだ。」 「そうなんだ!れいむがしらべてあげるよ!」 人間の意図をゆっくりなりに理解した彼女はさっそくおうちの奥へと進んだ。 ゆっくりできるかどうかを調べるとき、ゆっくりの思考能力は跳ね上がる。 その思考能力をいかしてれいむは壁、天井、床、広さ高さ奥行きを丹念に見て回った。 まわりはぜんぶ木なんだ…ニンゲンのおうちみたいだなぁ。あかちゃんといっしょにとおれるぐらいひろくてゆっくりできそう。 でもなんかむしあついよ…むしあついとゆっくりふやけちゃうよ。 暫くの間、角柱の中からガサゴソという音や独り言が聞こえてきた後、母ゆっくりが出てきた。 「ちょっとむしあついけどゆっくりできるよ!」 飛び跳ねながら人間に報告するれいむ。 彼女は涼しければこれに住みたいなあと思い始めていた。 「これ、れいむたちのおうちにしたいよ!おねがい!」 「勿論だ。最初にゆっくりできる物だったらあげるって言ったろ?」 れいむの必死のお願いに対する答えは嬉しい物だった。 たしかにそういう約束は行われていたが、悲しいかなゆっくりの記憶能力ではもう薄れかかっていたのだ。 「ほんとう!?じゃあ、これはれいむのおうちにするよ!」 「いいよいいよ。よし、こんな日当たりのいい場所じゃ蒸し暑くなるのも当然だ。木陰へ持って行こうね。」 「ありがとう!おにいさん!」 涼しくて快適なおうちをひとしきり子供と楽しんだ後、れいむはこれを森へ持って行って貰えないだろうかと考え出した。 でも、おにいさんいそがしそうだしむずかしいよね… れいむの視線の先には木の板に向かって棒で何かを引っかいている人の姿があった。 書き物をする人間を眺める事しばし、彼が握っていた棒を置き立ち上がってれいむたちの方へ向かってきた。 「おにいさん?どうしたの?」 飛び跳ねながら何か用なのかとたずねるれいむ。 「僕はこれから出かけなきゃいけない。君らはどうする?ここでゆっくりしてもいいよ。」 手に丸めた紙を持った人間がしゃがんでれいむたちに聞いてくる。 一度おうちに帰ってもいいしここでのんびりゆっくりしてもいいけど、家族は一緒に行動したほうが良いとアドバイスを付け加えられた。 「ゆ!?おにいさん!このおうちをもりにはこんでほしいよ!」 「あ~、流石にそこまでする時間は無いなぁ…」 チャンスだとばかりにお願いをするれいむだったが聞き入れられなかった。 れいむもそう物事が上手く運ぶとは思っていなかったので素直にあきらめる。 その落胆したような前傾姿勢──というより頭頂部だけ前に出すという器用な落ち込みかたを見た人間がある提案を出した。 「じゃあさ、とりあえずおうちに帰ったらどうだい? もしこれがゆっくりできるなら明日持って行くし。ここが気に入ったなら住んでもいい。」 「ゆゆ!ほんとう?」 「ああ、本当だ。もし住むつもりならおうちから今日の夕飯だけ持って来るといいよ。 引越しは明日にすると良い。」 れいむは彼女の餡子脳でしばし思考した。 はたけがちかいとむしさんたべほうだいだね! にんげんとなかよくなればゆっくりできるからここにすみたいよ! 「おにいさん!れいむたちここにすむよ!ごはんをゆっくりとってくるね!」 「おお、そうか。じゃあ僕はちょっと出かけてくるからみんなでゆっくり取りに行ってね。」 「ありがとうおにいさん!じゃあれいむたちはいってくるよ! れいむのあかちゃん!ゆっくりついてきてね!」 言葉とは裏腹に赤ちゃんゆっくりの出せるほぼ全速力でれいむたち一家は出て行った。 張り切った様子を眺めていた彼はその光景をほほえましい物と感じ取り、れいむたちの後姿を眺めたのちに歩き去った。 by sdkfz251 いい話でした -- heu (2008-08-19 15 54 57) 共存共栄いい話。 -- 名無しさん (2010-11-27 18 15 09) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4521.html
『最強伝説れいむ』 44KB 観察 思いやり 愛情 日常模様 育児 野良ゆ 現代 独自設定 なにが最強なのかって?さあ… 気ままあき 「ゆ……あ…………あっ…………」 雑居ビルが立ち並ぶ街。 ビルとビルとの間にある薄暗い路地裏…… そこには野良ゆっくりの棲家と思われる使い古しのダンボール箱がいくつも立ち並んでいる。 そのダンボール箱のひとつに……その成体れいむは住んでいた。 そのれいむは野良らしく汚れていた。 あんよはカチカチに黒ずんでいて、肌も土まみれ埃まみれ。髪の毛はボサボサ、 命同然のお飾りである紅白リボンも薄汚れている。 しかし汚れてはいるが特に外傷などはなかった。恐らくこのれいむは健康そのものだろう。 それなのになぜか……そのれいむには生気がまったくない。 ダンボールの中で一日中なにをするわけでもなく、日がな一日腐った魚のような無気力な目をしてボーとしているだけ。 何日もごはんを食べてなく、強烈にお腹がすいているはずなのに狩りにいこうという素振りさえない。 一体このれいむに何があったというのか? ぽよん……ぽよん…… それはゆっくりが元気良く跳ねる音。 れいむは思わずその音がする方角へとゆっくり振り向く。 れいむが視線を向けた先には……かすかに遠くに見える表通りを元気良く、 そして仲睦まじく飛び跳ねていく若いまりさとれいむの姿が見えた。 その二匹も薄汚れた身体をしていておかざりにバッジをつけてないゆっくりであり……間違いなく野良ゆだろう。 そんな若い野良まりさと野良れいむの姿を見続けるれいむのの目元から一筋の涙が流れ落ちる。 れいむは若い彼女たちを見て思わず思い出してしまったのだ。 まだ若く、元気いっぱいだった頃の自分を。ゆっくりできる未来を無邪気に信じていたあの頃を…… (ぞうだよ……れいむもむかしは……むかしはあんなふうに………まりさと……いっしょに………れいぶ……は……) そして思い出すのだ。希望とゆっくりに満ち溢れていた、れいむが一番輝いていたあの時代を…… ぽよん!ぽよん! 間の抜けた音が道の向こうから近付いてくる。 これはゆっくりが飛び跳ねる音。なんとも気の抜ける擬音である。 「ゆゆ~~ん!ちこくっ!ちこくぅぅぅ~~~~~~!」 必死に飛び跳ねて先を急いでいる(つもり)のれいむが現れた。 身体全体のい汚れ加減から一目瞭然、どこからどう見ても立派な野良ゆっくり。 野良れいむはこの時ゆっくりしないで先を急いでいた。 今日は待望の生ゴミの日だというのについ寝坊をしてしまったからだ。 このままではしあわせー!なごはんさんを得ることができずにゆっくりできなくなってしまうだろう。 ゆっくり寝坊してから起きた野良れいむは、寝坊した事に気づくと取るものもとりあえず巣を飛び出してきた。 朝御飯はきちんと食べないとゆっくりできないので、それなりー味の葉っぱさんを口にくわえている。 「ゆんっ!あのかどさんをまがれば、ごみすてーしょんさんがみえてくるよ! いまれいむがたぁ~~くさんむーしゃむーしゃしにいってあげるからね!ごはんさんはゆっくりまってて……」 「ゆーん♪きょうもたいりょうっなのぜぇ~~♪ゆっくりおうちにかえ…」 びった―――んっ! なんという事だろう。角を曲がろうとした野良れいむが、同じく反対側から角を曲がろうとした野良まりさと 正面衝突!してしまったではないか。なんか昔の少女漫画の定番みたいな間の抜けた展開である。 「ゆべええええっ!?い、いだぃぃぃぃぃっ!おぼにおがおがいだいぃぃぃぃっ!」 「いだいのぜぇぇぇぇっ!ばりざのかっこいいおかおざんがぁぁぁぁっ!?」 お互いに涙を流しながら、陸にうちあげられた魚のごとく身体をびったんばったんと跳ねまくる。 なんともオーバーな痛がりようである。 一通り痛がった後……二匹はよろよろと起き上がるとキッと顔を上げた。 ぶつかってきた相手に文句のひとつでも言わなければ気がすまないのだろう。だがしかし…… 「ゆっ!?」 「ゆゆっ!?」 不思議な事に野良れいむと野良まりさはお互いの姿を認めた瞬間に固まってしまったのである。 ぶつかった痛みや怒りなどもうどこかに消し飛んでいた。 (ゆ、ゆぅぅぅ……とってもわいるど!でゆっくりしているまりさだよぉぉぉぉ……!) (な、なかなかのびゆっくりなのぜぇ……まりさごのみのゆっくりしたびれいむなのぜぇぇぇ……!) 気が付けばれいむとまりさはお互いをまじまじと凝視していた。 そのままじりじりと相手を観察しつつ、無意識に互いが円を描くようにゆっくりと横に移動していく。 両者の頬に流れる一筋の汗。その様はまさに真剣をもった剣士同士の果し合いのよう。 たっぷり10分間に渡る無言の対峙……その均衡が遂に破れる時がきた。 「ゆ、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!だぜ!」 意を決して発せられた渾身のゆっくりできるご挨拶。 「れ、れいむはれいむだよっ!」 「ま、まりさはまりさなのぜっ!」 そして自己紹介。人間が聞いたら何がどう違うのかさっぱり分からないが、 ゆっくりにとってはこれで充分個体認識できるらしい。 「ま、まりさは……ま、まりさ……はと、とても………とてもゆ…………ゆ、ゆぅぅぅぅぅぅんっ!」 必死の覚悟で何かを言おうとしたれいむ。 しかし結局何もいえずに顔をまっ赤にし、ぴこぴこさんで顔を隠していやいやするように身をもじった。 一体なんなんだろうかこれは……?新手の精神攻撃かなにかなのだろうか? 顔を赤くして何かを言い出せないれいむを見かねて、今度は同じように顔をまっ赤にしたまりさが口を開く。 「れ、れ、れ、れ………れいむはとっても……とってもゆっっっっっくりしてるのぜぇぇぇぇぇっ! ま、まりざと……まりざとっ!ずぅぅぅぅぅぅっっっとゆっぐりしてほしいのぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 「ゆ、ゆううううううううっ!?ま、まりさぁぁぁぁぁっ!」 なんという事だろう。喧嘩でもするのかと思ってたのだが、なんとこれはプロポーズだったらしい。 まりさ一世一代の『だいっ!こくっ!はくっ!』に思わず嬉し涙を流し、感動の目でまりさを見るれいむ。 ついでにうれしーしーも壊れた蛇口のようにぶしゅぅぅぅ!と漏らしてたのだがこれはまあ目をつぶっておこう。 女のれいむから男のまりさ(どっちもメスだが)に愛の告白をするなどはしたない行為。 そんなれいむの女心?をゆっくり理解し、ありったけの勇気を振り絞って自分から告白したまりさ…… その男らしい心遣いは当然れいむもゆっくり理解しているだろう。だかられいむは猛烈に感動したのだ。 そしてその告白を受け入れることに迷いは微塵もなかった。 「も、もちろんだよ!まりさ、れいむといつまでもず~~っといっしょにゆっくりしようねっ!」 「ゆ、ゆぅぅぅぅぅっ!や、やったのぜぇぇぇぇぇっ!びゆっくりのれいむをおよめさんっにできたのぜぇぇぇぇっ! これでまりさもおとなのなかまいりっなのぜぇぇぇぇっ!」 「さっそくおうちでゆっくりしようね!ゆっくりしないではやくゆっくりしようね!」 「まりさのおうちはこっちなのぜ!ゆっくりあんないっするから、れいむはついてくるのぜぇ!」 「ゆゆ~~ん!れいむはゆっくりまりさについていくよ!」 こうしてどこにでもよくある野良ゆっくりの番がまた一組出来上がったのであった。 それにしても……この偶然の出会い→いきなり告白→即カップル誕生までにかかった所要時間は実に20分。 番を決めるという一生の大事をこうも簡単に決めるとはあまりにも異様に決断が早すぎるのでは…・・と思われるだろう。 が、実は野良ゆっくりの世界においては別に珍しいことではなかったりする。 まずゆっくりは名前に反して意外とゆっくりしていない。特にゆっくりを求める事に関しては性急である。 加えて野良という過酷な状況がのんびりとした交際を許さないという事情がある。 まずお友達から始めましょうね~などと相手をじっくりと吟味する暇など野良にはないのだ。 常に野良は一期一会、明日にはお互い命があるかどうかすら分からない。 だから気に入った相手とめぐり合ったならば即アタックが当たり前、即番をゲットするのは当然の事なのである。 そもそもその日暮らしの野良が自分が気に入る相手とめぐり合うこと自体、非常に稀なのだ。 貴重なチャンスをむざむざ逃してるとクズの烙印を押されて一生独身という目になりかねない。 子供に固執するゆっくりにとって一生独身というのは最高にゆっくりできない最低の未来である。 と、いう訳でともあれ……こうして野良ゆっくり同士が出会いそして番となった。 なら次に二匹がするべきこととはなにか? そりゃもちろん性欲に忠実な若い野良二匹が出会えば、後はもうレッツゴーホテルしかないであろう。 「やさしくしてね?やさしくしてね?れいむはじめてだから、らんぼうっはしないでね?」 「まりさもはじめてだから、もしまちがってたらごめんなのぜ……じゃあれいむいくのぜ……?」 「ゆん……きてまりさ……れいむのはじめて、ゆっくりもらってね」 「かわいいのぜれいむぅ……」 そんな気持ちの悪い愛の言葉をぬけぬけと抜かしながら、 まりさのおうちである路地裏の薄汚いダンボールハウスで肌を重ねる二匹の汚物。 そして自称『しんせいっなあいのいとなみさん』が始まった。 「むほぉぉぉぉぉっ!れいぶぅぅぅぅっ!ばりざのれいぶのまむまむぅぅぅっ!ずっっっっんごいのぜぇぇぇぇぇっ! ばりざずぐにでもしょうてんっしじゃうのぜぇぇぇぇぇぇっ!」 「おほぉ!おほぉぉぉぉ!がわいいれいぶがぁぁぁぁぁっ!いどじのまりざにはじめでをざざげでるぅぅぅぅぅっ! れいぶぅぅぅ!しょじょじゃなぐなっでるうぅぅぅぅぅぅっ!けがれちゃっでごめぇぇぇぇんねぇぇぇぇぇぇっ!!」 「いぐぅ!いぐぅぅぅっ!ばりざもういっじゃうのぜぇぇぇぇぇっ!」 「ぎでぇ!ぎでばりざぁぁぁぁっ!がわいいれいぶをはらまぜでぇぇぇっ!がわいいおじびじゃんうまぜでぇぇぇぇっ!」 「れいぶぅ!れいぶぅ!れいぶぅぅぅぅっ!いぐのぜっ!いぐのぜぇぇぇっ!さいきょうっのまりさのっ! さいきょうっのいでんしさんをうげどるのぜぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」 「いぐぅ!いぐいぐいぐいぐぅぅぅぅぅぅぅっ!むほおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」 「おほほぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!」 「「ずっぎりぃぃぃぃぃぃぃ―――――――――――――――っっっっ!!!?!」」 「すてきだったのぜれいむ……」 「ゆんっはずかしいよまりさ……ゆふふっおなかのあかちゃんたち、ゆっくりしてるよぉ……」 事が終われば二匹とも賢者モードに突入である。 ぴこぴこさんでお腹を優しくさすって新しくできた命を大事そうにいとおしむれいむ。 そんなれいむを優しげなまなざしで見守るまりさ。 これがついさっきまで涙とよだれと変な体液を垂れ流しまくって絶叫していた汚物どもだとはとても思えない。 「れいむたち……いますごくゆっくりしているね……」 「まったくなのぜ……まりさたちはいま、まちがいなくせかいでいちばんゆっくりしているのぜ……」 「ゆん……?ねえまりさあれをみてね」 れいむが不意に遠くに見える表通りをぴこぴこさんで指差した。 まりさは何事かとゆっくり指差した方を見て……ゆっくり頷く。 そこには表通りを歩いている「ゆっくりしていない人間さん」がたくさんいた。 「ああ……くそにんげんがゆっくりしないであるいているのぜ。でもそれがどうかしたのぜ……?」 「あいからわずゆっくりしてないなって思ってね……」 「まったくさいていっのいきものなのぜ……くそにんげんってやつは……」 「うまれてくるおちびちゃんたちは、ぜったいにあんなふうになってほしくないよ……」 「だいじょうぶっなのぜ。まりさのれいむのおちびちゃんなんだぜ?ゆっくりしたゆっくりにうまれてくるはずなのぜ」 「ゆふふふ……そうだねまりさ。れいむちょっとふあんになってとりこしくろうをしちゃったよ」 「れいぶ……ゆんっこいつぅ~~」 「ゆふふふっ♪」 ……などという新婚熱々甘甘だるだるな三文芝居が この調子でこの後ず~~~~~~っと続くのであるがあえて割愛しておこう。 このままではこの物語の読み手達のストレスがマッハ全開でブレイク限界してしまうだろうから…… それかられいむとまりさの夫婦生活が始まった。 妊娠してあまり動けないれいむは巣の掃除や整理などを担当し、 まりさは毎日ゴミ捨て場や公園などで餌となりうる生ゴミを手に入れたり雑草を引き抜いてきたりする。 番になってもやる事は相変わらずの野良生活ではあるが、 おちびちゃんというゆっくりできる明日が明確に見えている二匹の表情は明るい。 そして二匹が番になって一週間後……ようやく待望のおちびちゃん出産のときを迎えたのであった。 「ゆぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃぃっ!う、うばれるぅぅぅぅぅぅっ!」 「がんばるのぜれいむ!もうすぐおちびがれいむのぽんぽんからかおをだすのぜ!あともうすこしなのぜっ!」 「ゆ、ゆっぐじ……!れいぶのゆっぐじがぁぁぁ……!みらいへのきぼうざんがぁぁぁぁっ! けがれなきてんじざんがぁぁぁぁぁっ!!い、いまちじょうにこうっりんっずるよぉぉぉぉっ!?」 「もうずぐなのぜ!もうずぐなのぜっ!ゆっくりじたおちびを、さいきょうっのおとーざんが ゆっぐりしたおぼうしでうけとめるのぜっ!」 「ゆぐぐぐぐ…………がぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」 すぽん!ぽ――――んっ! その時!れいむのお腹から打ち出されたパチンコ玉のようにふたつの命が吐き出された。 まるで数日間お通じがよくなくてとことん苦しんだ挙句、やっとこさ下痢便をぶりぶり排泄したかのごとき勢いである。 吐き出されたモノは前もって身構えていたまりさの帽子の中にナイスシュートとばかりに入り込む。 帽子の中に入り込んだモノ達はしばらく帽子の中でもぞもぞしていたが…… やがてれいむのまりさの前に彼女たちはゆっくりとその姿を現した。 「「ゆっくちちていっちぇにぇぇぇぇぇっ!」」 「ゆ、ゆわぁぁぁぁ~~~っ!と、と、と、と~~~ってもゆっくりしたおちびちゃんだよぉぉぉぉっ!」 「ゆっくりしていってね!まりさがまりさだぜ!おとーさんなんだぜっ!」 「ゆっくりしていってねぇ!れいむがれいむだよ!おちびちゃんたちにゆっくりしたおかーさんだよぉぉぉぉっ!」 「おきゃーしゃん!きゃわいいれいみゅにしゅーりしゅーりちてぇ!」 「ゆゆっ!まりちゃおにゃかがしゅいたんだじぇ!」 「まっててねえぇぇぇぇ!すぐにごはんさんをよういしてあげるし、すーりすーりもたくさんっしてあげるからねぇぇっ!」 この後のれいむ達の家族団欒の様子は特に描写すべきことはないだろう。 れいむは野良ゆっくりにありがちな、ゆん生最高のゆっくりを思う存分味わっただけのことだから。 こうしてれいみゅとまりちゃを一匹づつ授かったれいむとまりさは路地裏でさらなるゆっくりを謳歌した。 後から考えてみると……まさにこの頃がれいむのゆん生における絶頂期であったかもしれない。 「ゆっくりのひ~~♪まったりのひ~~~♪」 「ゆゆ~ん!おきゃあしゃんのおうたはゆっくちできりゅにぇ!」 「まりちゃもゆっくちうたうのじぇ!ゆっくちのひ~~♪」 「ゆーん!さすがれいむとまりさのおちびちゃんだよ~。おうたもとてもゆっくりしているね!」 出産してさらに一週間後。路地裏のダンボールハウスで家の留守を守りながら子育てするれいむの姿があった。 子供……特に赤ん坊ほど手のかかるものは他になく、それこそ24時間つきっきりで面倒を見なければいけない存在である。 ゆえにれいむは決してまりさにばかり働かせ、 自分は家で子供と遊んでばかりでだらけているわけではないという事を理解してもらいたい。 「……ゆっ?にぇえにぇえおきゃーしゃん!あれはなんなのじぇ?」 「ゆん……?」 「ゆゆ~~……なんだきゃ、ゆっくちちてにゃいいきもにょだにぇ!」 突然まりちゃが表通りを歩く人間を見つけておさげで指差した。 そういえばれいみゅとまりちゃはまだ『人間』という存在を見たことがなかった。 『人間』がいかなる存在なのかも詳しくは知らないであろう。 ならばここは親として人間とはいかなる存在であるかを教えなければならない。 何故ならば人間を知らずして野良を生き抜くなど不可能だからだ。 「おちびちゃんたちに、ゆっくりとしたおかあさんがゆっくりおしえるよ!あれはね『にんげんさん』ていうんだよっ!」 「ゆゆっ?にんげんしゃん?」 「にんげんしゃんはゆっくちできりゅのじぇ?」 「ゆう……それがね……にんげんさんはぜんぜんっゆっくりできないよっ!」 「ゆ、ゆっくちできないのじぇ?」 「れ、れいみゅしんじられにゃいよ!にゃんでそんなゆっくちできにゃいどーしよーもないのがいりゅにょ!?」 「それはね!にんげんさんはゆっくりじゃないからだよっ!」 「「ゆゆゆっ!?」」 れいむは『人間』をちびちゃん達にゆっくりと教えていく。 人間がいかにゆっくりできない下等生物であるのかを…… ゆっくりのゆっくりっぷりに嫉妬して意地悪ばかりしているという耐えがたい現実を…… 人間はゆっくりできるおうち、あまあま、ゆっくりできるすべてのものを独り占めするゲスだということを…… 一部の物好きな人間はゆっくりを捕まえて『飼いゆっくり』という奴隷にしていることを…… さらにゆっくりを虐待する事に喜びを見出す『虐待鬼意惨』なる最底辺の種まで存在するということを…… 逆にゆっくりを崇め奉る良心的人間もごくごく稀にではあるが存在しているということを…… だがその種類の人間……『愛で派』は本当に数が少なく、絶滅寸前の希少種であるということを…… 「し、しんじられにゃいのじぇ……」 「どぼじて……?どぼじて、そんにゃゆっくちできにゃいのがこのよにいりゅにょ……?」 「ゆん……おちびちゃんたちのきもちは、おかあさんもすごーくわかるよ…… でもね……だからこそゆっくりはにんげんさんたちにかかわっちゃいけないんだよ! そっとしておいてあげなきゃいけないんだよ!りかいできるかな?」 「ゆ、ゆゆっ?」 「ゆっくりしたゆっくりをみるとね、にんげんさんはなぜかゆっくりできないんだよ…… しっとしちゃうといえばわかりやすいかな?」 「まりちゃにしっとしちゃうのじぇ?まりちゃ、きゃっこよくちぇごみぇーんにぇ!なのじぇ!」 まりちゃは嫉妬されていると聞かされて思わずお決まりの『かわいくてごめんね!』系の挨拶をした。 これは自分の可愛さ、格好よさ、ゆっくりっぷりに対して過剰なまでに根拠のない自信をもっているゆっくりが 自分では謙虚に振舞っているつもりだが、実はいい気になって自慢する為にやる傲慢な挨拶である。 しかしれいむはそんなまりちゃの謙虚でゆっくりできるご挨拶に対して悲しそうに首?を横に振った。 それじゃ駄目なのだとれいむはさらに言う。 「だめなんだよ。おちびちゃんがいくらけんきょっにふるまってもね……にんげんさんのしっとはおさまらないんだよ」 「ゆゆゆっ!?」 「ど、どぼじてぇぇぇぇぇっ!?」 「にんげんさんはそれくらいこころがせまい、ゆっくりできないいきものなんだよ…… だったら……もうほっとくしかないよね?ゆっくりはにんげんさんとかかわりあいにならないほうがいいんだよ それが、それだけがにんげんさんがゆっくりできる、たったひとつのほうほうっなんだよ……」 「ゆう……」 「にんげんしゃんというのは、かなしいいきものなのじぇ……」 「みんにゃでゆっくりしたほうがゆっくちできりゅにょににぇ……」 「おちびちゃんたちのいうとおりだよね。でもにんげんさんはそれがりかいできないんだよ…… ゆっくりしてないからね」 「ゆっくち……りきゃいちたよ……」 「まりちゃもりきゃいちたのじぇ……」 「ゆ、ゆん!にんげんさんのおはなしをしたせいでちょっとゆっくりできなかったね! もうにんげんさんのことはわすれて、みんなでゆっくりしようねっ!」 「そうだじぇ!まりちゃはゆっくちしゅるのじぇえ!」 「ゆっくちできにゃいにんげんしゃんなんちぇ、もうれいみゅしらないよ! にんげんしゃんのじごうじとくっなんだからしょうがにゃいよ!」 「そのとおりだよおちびちゃんっ!だかられいむたちはゆっくりしようね! ゆっくりできないにんげんさんのぶんまでね!」 「「ゆっくちしゅるよっ!」」 れいむの物言いには少し問題あるが……野良ゆっくりが人間と関わってはいけないと子供に教えたのは大正解である。 生活が辛くても、あまあまが手に入らなくても、死にたくなければ人間と接触してはいけないのだ。 だが……しかしこんな人間の街のド真ん中で、果たして人間に関わらずに生きていくなんてできるのであろうか? 現にれいむ達家族の食事だって、まりさがゴミ捨て場から拾ってきた人間の食べ残しが多いのだ。 たとえ野良ゆっくりの方から関わり合いになるのを避けたとしても限界がある。 その限界はさらにもう少し時が流れ……まりちゃとれいみゅが子ゆっくりになった頃に突然訪れた。 「ゆ~……おとうしゃんとおかあさん、かえってくるのおそいにぇえ!」 「しんぱいしなくても、すぐにたくさんのごはんさんをもってかえってくるにきまってるのじぇ!」 「ゆんっ!そうだにぇえ!れいみゅはゆっくちおるすびゃんするよ!」 「さいきょうっのまりちゃさまが、おうちをゆっくちまもるのじぇ!」 どうやられいみゅとまりちゃが子ゆっくりにまで成長して家の留守番ができるようになったのをきっかけに、 れいむもまりさと一緒に狩りに赴くようになったらしい。 とはいっても子供をおうちに残して狩りにいくのは、れいむにとって本当に時々やるくらいのことだ。 子供とおうちが心配がゆえに家を空けるのは一週間にわずか二日程度、ゴミ捨て場に生ゴミが出される日だけである。 それも留守にする時間は朝っぱらのほんのわずかな間にすぎない。 たったそれだけの留守の間に何事かなど起きるものか。れいむはそう考えていただろう。 ……だがそれで充分なのだ。野良ゆっくりに突然の不幸が襲いかかるのはまさにそんな間隙の時なのだから…… 「おーい。なんか物音がすると思ったら……こんな路地裏に野良ゆの巣がありやがるぜー」 「へえ……ねえバスが来るまでちょっと暇つぶし、しちゃう?」 「いいねえー」 「「ゆっ?ゆゆっ……?」」 「ゆっゆ~~ん♪きょうもたいっりょうっなのぜぇ~~♪」 「やったねまりさ♪これでおちびちゃんたちもおおよろこびだよっ!」 二匹がおうちを出てから40分後……黒帽子に生ゴミをぱんぱんに詰込んだまりさとれいむが帰ってきた。 上機嫌な様子を見るに狩りの成果は上々のようだ。 はやくおうちに帰りたい、お留守番をしているおちびちゃん達に狩りの成果を見せて尊敬されたい、 家族みんなではやくむーしゃむーしゃしてしあわせーになりたい…… そう二匹の顔に書いてあるかのような満面の笑顔。だが…… 「ゆっ……?ど、どぼじておうちがひっくりかえっでるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」 まりさは自分のおうちを見たとたんに驚愕して思わず叫んだ。 何故ならおうちであるダンボールハウスがわずかに吹き飛ばされており、 中にあった古タオルや備蓄の食糧などが飛び出して辺りに散乱してたからだ。 よく見るとダンボールの側面が少しひしゃげている。まりさには分からないがこれは人間が蹴った跡である。 「ば、ばりざのがっごいいおうちがぁぁぁぁっ!ばりざのゆっくりじでるおうちがどぼじでごんな………ゆっ!? お、おちび?おちびはどこいったのぜ!?お、おちびぃぃぃぃっ!おちびどこなの………ゆっ!?」 一通りおうちの惨状に泣き喚いた後、ようやく子供たちの安否に思いが至ったまりさ。 キョロキョロと周囲を見渡して自分のおちび達を探す。 どうしてこんな有様になったのかをおちび達から聞き出さねばならない。 これはどういう事なのだと。もしおちび達による性質の悪い悪戯だとしたらさすがにちょっときつーいお仕置きを…… そこまで思ったまりさが最初に見つけたもの……それは番であるれいむの後姿であった。 気のせいかれいむの身体が小さく震えている。 まりさはそんなれいむに声をかける事ができずにれいむに近付いていく。 れいむが口にくわえていた『それなりー味な草さん』がバサッと地面に落ちた。 まりさはれいむの身体越しに見てしまった……れいむが見ていたモノを。 そして……れいむは叫んだ。心の底から腹の底からありったけの力で絶望の叫びを。 「れ……れいぶのおちびちゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?ああああああああああああああああああああっっっ!?」 れいむの目の前には我が子のなれの果てが転がっていた。 まりちゃは全身を『木の枝さん』や『爪楊枝さん』でぷーすぷーすされた…… 目も、あにゃるも、舌も、身体中のありとあらゆる場所に何十本と木の枝等をハリネズミのように刺された我が子の姿。 失餡で楽に死ねたわけではない、その事はまりちゃの死に顔が雄弁に物語っている。 非ゆっくり病になるくらいのゆっくりできない苦痛を極限まで与えられたと思われる。 その死に顔はとてつもなく苦痛に歪んでいた。 れいみゅは……おそらくまりちゃに対する見せしめとして、まっ先に殺されたと思われる。 よく観察しながられいみゅの死体を見てみればわかる。 おかざりが半分ちぎられていた。ぴこぴこさんがひっこ抜かれていた。左眼をアマギられていた。 その上で……真上から足で踏み潰されていた。 口から。目から。まむまむから、あにゃるから、れいみゅはありとあらゆる穴から餡子を噴出して絶命したのであろう。 ゆっくりの無力さをさんざん思い知らせた末の見せしめの処刑…… 犯人の残忍性は死体の有様を見ればよくわかるというものだ。 「ゆんやぁぁぁぁぁっ!お、おじびじゃっ!れいぶのおじびじゃんがぁぁぁぁぁぁっ!」 「ばりざにのおじびがぁぁぁぁぁぁっ!ど、どぼじでっ!どぼじでごんなぁぁぁぁぁっ!ゆんやぁぁぁぁぁぁぁっ!」 「ぺーろぺーろ!おじびじゃん、じっがりじでね!いばおがーざんがぺーろぺーろじでなおじであげるがらねっ!」 「おじびぃぃぃっ!えだざんぬげるんだぜ!ゆっぐじじないではやぐぬけるんだぜっ! ぐああああああああああっ!はやぐぬげろぉぉぉぉぉぉっ!このくそえだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 れいむは潰れてぺしゃんこになっているれいみゅを必死にぺーろぺーろして舐め始める。 まりさはまりちゃに刺さった枝を口とおさげで引き抜き始めた。 しかしそんな事をしてもすでに永遠にゆっくりしているれいみゅとまりちゃが生き返るはずもなく…… しばらく無駄な徒労をした後、二匹はそれぞれ作業を放り出して泣き喚いた。とにかく大声で泣き喚き続けた。 「ゆあああああああんっ!れいぶのおじびじゃんがぁぁぁぁっ!れいぶのゆっぐりがなぐなっじゃっだよぉぉぉぉぉっ!」 「あんまりなのぜぇぇぇぇぇっ!ばりざなにもわるいごとじでないのにぃぃぃぃぃぃぃっ!」 「がえじでぇぇぇぇっ!れいぶのゆっぐじをがえじでよぉぉぉぉぉっ!ゆあぁぁぁぁんっ!」 「いくらばりざがゆっくりじでいるがらって、りふじんすぎるでしょぉぉぉぉぉぉっ!?」 「れいぶはひげきのひろいんさんだよぉぉぉぉぉっ!ふこうっなしんでれらさんだよぉぉぉぉぉぉぉっ! どぼじてみんなじてれいぶにいじわるずるのぉぉぉぉぉっ!?ゆっぐりできないでしょぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」 「「ゆああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!ゆああああああああああんっっ!!」」 さてお気づきであろうとは思うが……れいむとまりさは子供を失った事で悲しんでいるのではない。 子供という『ゆっくりできる事』を失った事を悲しんでいるのだ。 れいむ達……いやゆっくりという種にとって、死んだゆっくりなどそれこそ単なる物扱いである。 おちびちゃんたち痛かっただろうね。辛かっただろうね。お空のゆっくりプレイスでゆっくりしていってね…… などと死者を悼む気持ちなどまったくない。ゆえに犯人を探して謝罪させよう、敵を討とうという気持ちもない。 それよりも自分がゆっくりする方が先なのだ。 おちびちゃんがいないとゆっくりできない、おちびちゃんを失ったれいむはかわいそう、れいむは悲劇のヒロインさん… 今れいむはそれだけしか考えてない。悲しみをゆっくりに変える事しか考えていない。 この状況で少しでもゆっくりしよう、少しでもゆっくりしたいという本能だけがれいむを突き動かす。 その本能が『おちびちゃんが殺された』というゆっくりできない現実を頭の中からきれいに消し去った。 後はただ泣くだけ。悲しみを忘れ悲劇のヒロインを演じてゆっくりする為に大泣きするだけ。 ゆえにれいむとまりさは泣きに泣いた。 人間がめったにこない路地裏であった事が幸いし、人間が騒音被害で乗り込んでくる事がなかったのだけが救いであった。 「ゆぐっ……ゆぐっ……れいぶのゆっぐじ………おちびじゃん………」 「ゆん……れいむ、かなしいのはわかるけどいつまでもないててもしょうがないんだぜ……」 「ばりざ……ばりざぁぁぁぁ……」 「おちびはまたつくればいいよ!とりあえずきょうはもうゆっくりするんだぜ?」 「ゆう……ゆぐっ……どぼじてれいぶばかりこんなめにあうのかな……?れいぶがかわいいからなの……?」 「きっとそうなんだぜ……まりさとれいむがあまりにゆっくりしてたから、ついふこうさんがきちゃったんだぜ」 「ゆぐっゆぐっ……れいむひげきのひろいんさんでごめ~んねぇぇぇぇ………!」 その後まりさは蹴り飛ばされたダンボールを元の状態に戻した。 幸いおうちの損傷は軽微のようで、引き続き住むのになんの不具合もなかった。 おうちを元に戻してれいむと一緒によろよろとおうちの中に入って、まりさ達はとりあえずゆっくりした。 おちびちゃんの死体を埋葬するなどまったくせず、そのまま外にほったらかしでとりあえずゆっくりした。 そして二匹がおうちに入ってわずか10分後…… 「ゆほぉぉぉぉぉっ!ゆほほぉぉぉぉっ!ばりざのれいぶのまむなむ、やっばりずんごいのぜぇぇぇぇぇぇっ!?」 「おほぉ!おほぉ!ばりざぁぁぁっ!ゆっぐりできながっだきょうのふこうざんをわずれざぜてぇぇぇぇっ! しょうしんっのれいぶをゆっぐりなぐざめでねぇぇぇぇぇぇぇっっ!?!」 「なぐさめでやるのぜれいぶぅぅぅぅっ!ぞじだらまだばりざのおちびをうむのぜぇぇぇっ!?」 「うむぅぅぅっ!れいぶもっとおじびじゃんをうむぅぅぅぅっ!もっどもっど!れいぶはゆっぐりずるぅぅぅぅぅっ!」 「いぐぅ!ばりざもういっじゃうぅぅぅぅぅぅっ!」 「ゆっぐりぃ!ゆっぐりゆっぐりぃぃぃぃぃっ!」 「「んほぉぉぉぉぉぉぉっ!ずっぎりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!」」 れいむは番のまりさと自称『けがれなきてんしたんじょうのぎしきさん』ことすっきりー!をしてまた子供を産んだ。 しかも今度は植物妊娠をして8匹もポコポコ産んだのである。 これはおちびちゃんの数が多ければ、たとえ一匹や二匹が不慮の事故で死んだとしても 充分ゆっくりできる数の子供が残るというれいむの計算によるものである。 それだけおとびちゃんという『ゆっくり』を失うことはれいむにとって痛恨の出来事だということであろう。 だがれいむはおちびちゃんに固執するあまり大事なことを忘れていた。それは…… 「ゆ、ゆっくりただいま……だぜ…」 「おそいよまりさ!さっさとごはんさんをだしてね!」 「ゆわ~~い!ごひゃん♪ごひゃん♪」 「まりちゃ、おにゃかいっぴゃいむーちゃむーちゃしゅるのじぇえ!」 しかしまりさの黒帽子の中から出てきたのは、とてもゆっくり10匹分に相当するとはいえない量の食料であった。 せいぜい4~5匹分であろうか?それでも大したものではあるが……でもれいむはそれじゃ満足しないのだ。 「はあああああああっ!?たったこれだけなのぉぉぉぉぉっ!? これっぽっちじゃおちびちゃんみんながむーしゃむーしゃでぎないでしょぉぉぉぉぉぉっ!?」 「ご、ごめんねなのぜ。で、でもまりさがいっかいでできるかりはそれでせいいっぱいなのぜ……」 「いいわけなんてききたくないよ!さっさとのこりのおちびちゃんのぶんのごはんさんもとってきてね! いますぐでいいよ!」 「ぞ、ぞんなぁ……まりざはいまかえってきたばかりでつかれているのぜ?せめてやすませてほしいのぜ……?」 「ばりざはおとうざんでしょおおおおおおおおっ!?さっさとごはんさんもってごいよこのくずぅぅぅぅぅっ!」 「ならせめてれいぶもかりをてつだってほしいのぜ……ばりざひとりだけじゃもうげんかいっなのぜ……」 「やだよっ!おうちをるすにして、またおちびちゃんをうしなうなんてもうまっぴらごめんだよ! れいぶはおうちにいておうちとおちびちゃんをまもるんだよっ!」 「で、でもぉぉぉ……」 「いいからまりざははやくかりにいってね!おちびちゃんぜんいんのごはんさんをとってこないかぎり まりさをおうちにいれないからね!」 「わ、わがったのぜ……ずーり……ずーり……」 赤ゆっくりが一気に8匹も増えれば当然食糧難になるのは目に見えている。 二匹育ててた頃もまりさとれいむが協力して狩りをして、ようやく食料の自給が維持できていたのだ。 親を含めて10匹もの大家族の食い扶持を補うなど野良ゆっくりの能力を遥かに超えている。 れいむは子供を一度失ったことで、子供に対してあまりにも臆病かつ盲目になってしまった。 自然とすべての負担は番のまりさに押し付けられる。 まりさは一日中狩りをしてもまだ追いつかないほどの食料供給のノルマを課せられていた。 「にぇえにぇえ!にゃんでおとーしゃんはゆっくちちてにゃいにょ?」 「おとーしゃんはゆっくちちてにゃいゆっくりなのじぇ!」 「ゆゆっ!それはくずっていうんだじぇ!」 「ゆっくちできにゃいゆっくちはれーみゅのどりぇいにちてあげりゅよ!」 「どれいはまりちゃのうんうんをたべさせちぇやりゅんだじぇえ!」 「うるざいよっ!まりざおとーさんはれいむとおちびちゃんたちのために、ゆっくりしないでかりをしているんだよ! おとうさんをどれいなんていうわるいこはおかあさんがぷくーっするよ!ぷくぅぅぅぅぅっ!!」 「「「「「ゆぴゃぁぁぁぁっ!?きょわいぃぃぃぃぃっ!おかあしゃんごめんなしゃいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」」」」」 断わっておくがれいむは決してでいぶと化したのではない。ただ必死なだけだ。 いまれいむは必死でゆっくりしようとしている。 子供を多く作りすぎたのはまずかったのではないかとれいむも感じてはいた。 だが産んでしまったからにはもう引き返せない。まさか我が子を口減らしに殺すわけにもいかないではないか。 番のまりさに無理を押し付けてすまないと痛感もしている。 第一れいむ自身もおちびちゃんの食事を最優先にしている為ほとんど食事していないのだ。 昔のようにまたまりさと一緒に狩りにいきたい。れいむも本当はそう思っている。 だが最初のおちびちゃん達を失ったあの悪夢が……れいむがおうちから離れる事を激しく躊躇させるのだ。 養いきれないほどの家族、動くに動けないれいむ、そして日々休む暇もなく重労働を課せられるまりさ。 この一家はもうとっくに完全な悪循環……負のスパイラルに飲み込まれていた。 そしてその日の夕方……終わりの始まりが早くも開始される事になる。 「ゆ、ゆっぐ……た、ただい………」 「ゆゆっ?ようやくかえってきたねまりさ!はやくおちびちゃんにごはんさ………ど、どぼじだのばりざぁぁぁぁっ!?」 おうちに帰ってきたまりさはボロボロの瀕死状態であった。 誰かに刺されたのであろう枝を何本も身体に受け、右目にも枝が突き刺さっている。 「ば、ばり……?ばりざ?ど、どぼじ……どぼじてごんな……」 「ゆ、ゆへへ……ばりざちょいと……どじふんじゃったのぜぇ……ばりざがみつけ……ごみすて……ざん…… どごかのむ……なわば……のぜ……。ご、ごめんねだぜ………きょうのごはんざん………は……」 「も、もういいよ!ばりざゆっぐりじでね!?ゆっぐりじでいっでねえぇぇぇぇぇっ!?」 「さいごにひとめ……れいぶをみれで……よかっ……」 「ばりざっ!ばりざぁ!ぞんなゆっぐりでぎないごといわないでよぉぉぉぉぉっ!ばりざぁぁぁぁぁぁっ!!」 「れ、れいぶとつがいになれで………ばり…ざ……ゆっぐり……」 「ばりざっ!ばりざっ!ばりざぁぁぁぁっ!ゆっくりじでよばりざぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 「も………もっと………れいぶ……と……ゆっぐじ………じだが……………た………」 「ゆっ……?ゆあ……ゆああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!」 れいむは初めてまりさと出会った時のように……ぴこぴこさんで顔を隠して号泣した。 番のまりさを失ったことは、れいむにとっておちびちゃんを失うよりも遥かに辛い出来事であった。 さすがのれいむもこの時ばかりは自分のゆっくりをすべて放り出した。 ただただ愛しいまりさの事だけを想って涙を流したのである。 今日、食糧調達に難儀したまりさはつい遠出して隣町のゴミ捨て場まで足を伸ばしたのだ。 だがそこは地元の野良ゆっくり、それもマフィアまがいのゲスゆっくりファミリーの縄張りであった。 まりさは危険を感じてただちに逃走を開始したが、それでも何度もゲスゆっくりに攻撃されて手酷い傷を受けた。 それでもおうちまで帰りつくことができたのは、ひとえにまりさのれいむへの想いゆえであろう。 本来ならばまりさが受けたその傷はその場で永遠にゆっくりしててもかしくないほどの重傷だったからだ。 「おかーしゃ……?」 「どぼちたのじぇえ……?まりちゃまだねむいねむいなのじぇ~?」 「ゆゆっ?にゃにこりぇ?」 「このおぼうち……もちかちて……おとーしゃん……?」 おうちの中でお昼寝していたおちびちゃん達が、れいむの号泣で起こされておうちの外へやってきた。 もう動かない父親……泣いている母親……赤ゆっくり達は状況がまったく理解できずにただおろおろするばかり。 そんな赤ゆっくり達をれいむは両方のぴこぴこさんで強く抱きしめた。 まだ涙は残っている。しかしれいむの瞳には強い決意が灯っていた。 まりさの忘れ形見を立派に育ててみせるという決意……誓い……覚悟が。 (まりさ……おそらのゆっくりぷれいすでみまもっていてね!れいむがこのこたちをしっかりとそだててみせるからね!) だが残念ながら世間は野良ゆっくりに対して優しくはないのである。 しかも今度はれいむ一匹で何から何まで全部やらなければならないのだ。 たった一匹で赤ゆっくり8匹の世話をしつつ8匹分の食料を調達する……無理だ。不可能を通り越して物理的に無理である。 れいむはこの時点で何匹かの赤ゆっくりの養育を諦めるべきであった。 せめて2~3匹程度ならばれいむだけでもかろうじて育てる事ができたであろう。 だがれいむの「母性」が、亡きまりさへの誓いが、れいむに無理を強行することを強いたのであった。 「こんにゃまずいくさしゃんなんきゃたべりゃれにゃいよ!まりちゃはあみゃあみゃがたべちゃいよ!」 「まえにおとーしゃんがもってきてくれちゃ、ばったしゃんがたべちゃいよ!」 「おきゃあさんはゆっくちちないではやきゅばったしゃんをとりにいっちぇにぇ!」 おうちに残した子供が足枷となって、れいむはゴミ捨て場どころか少し離れた狩り場にすらいけない。 当然そのぶん食事の質と量に反映されるわけであり。 以前ほどむーしゃむーしゃできなくなった赤ゆっくり達はすっかりお冠である……が。 れいむは謝罪するわけでもなく、かといってなだめるわけでもなく、ただ黙って子供たちの食事を下げたのだった。 「ゆゆっ?どぼじてごはんしゃんをとっちゃうにょ?」 「まりちゃはまだむーちゃむーちゃちたりないんだじぇ!」 「はやくごひゃんさんをかえちてにぇ!そちたらばったさんをもってきてにぇ!ぷんぷん!」 「まりちゃおこっちぇるのじぇ!もっとおいしいものたべしゃせるのじぇ!」 「うるさいよ!おかあさんがとってきたごはんさんにもんくがあるんならたべなくていいよ! おいしいものがたべたい?うちにはごはんさんはこれしかないんだよ!わがままいうこはごはんさんぬきだよ!」 「ゆ、ゆうううううううっ!?」 「ゆぇぇぇぇんっ!おきゃあしゃんがきゃわいいれいみゅをいじべるぅぅぅぅぅっ!」 「ま、まりちゃたちはまだあかちゃんなのじぇ?おやはあかちゃんをゆっくちしゃせなきゃいけないのじぇ?」 「おきゃあしゃんりきゃいできりゅ?」 「だからなんだというの?おちびちゃんたちがどれだけないてもわめいても、ごはんさんはてでてこないんだよ! ここにあるだけしかないんだよ!それにもんくいうのならじぶんでかりをしてきてね!ばかなの?しぬの?」 「「「「「ゆ、ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」」」」」 れいむもまだ自分ではなにもできない赤ゆっくりに対して無茶を言っているという自覚はある。 自覚はあるのだがそれでもあえて厳しく言わなければならないのだ。 現在のれいむ一家に赤ゆの果てなき欲望を優先できる余裕はどこにもない。 ここは心を鬼にしてでも生き残る方を優先させるべきなのだ。 このまま……おちびちゃん達が狩りができる子ゆっくり、もしくは亜成体にまで成長すれば希望も見えてくる。 それまでは過度なゆっくりなど決して許さない鬼おかんとして振舞うしかないのだ。 そしてさらに少し時が流れた…… 「れいみゅのいもーちょがぁぁぁぁぁぁっ!?」 「おちびじゃん!ゆっぐりなおっでねぇぇぇっ!ぺーろぺーろ!ぺーろぺーろ!どぼじでなおらないのぉぉぉぉっ!?」 「も、もっちょ……ゆっぐじ……」 「ゆんやあああああああっ!」 また一匹、れいむのおちびちゃんであるまりちゃが息を引き取った。 死因は通りすがりの野良猫にひっかかれ、噛み付かれたことである。 まったく不運としか言いようがない末路であった。 まりちゃから喧嘩を売りつけたわけではない。向こうから勝手に近付いてきて物珍しそうにじゃれただけだ。 れいむがが異変に気づいて駆けつけた時にはもう虫の息。当然助かる見込みなどこれっぽっちもなかった。 「ゆぐっゆぐっ……またれいぶのおちびじゃんが、えいえんにゆっぐりじちゃったよぉぉぉぉ………!」 「れいみゅのいもーちょがぁぁぁ……」 「ゆっぐりできないんだじぇ……まりちゃもうこんなのやなんだじぇぇぇぇ……」 番のまりさが死んだ日から今日まで、れいむのおちびちゃん達は様々な理由で次々と死んでいった。 次女れいみゅは、れいむが狩りで留守にしている隙に人間に踏み潰されて死んだ。 四女まりちゃは、小石を踏んづけてあんよが破れ……れいむが帰宅する前に失餡で死んだ。 五女れいみゅは、降雨後できた水溜りに間違えて飛び込んでしまい水に溶けて死んだ。 そんな感じでれいむのおちびちゃんは次々と死んでいく。 もともと脆弱で好奇心旺盛で歩く死亡フラグと言われる赤ゆっくりなのだから当然といえば当然の結果である。 れいむに残されたのはもはや長女れいみゅと末っ子まりちゃだけである。 いや二匹残っただけでも僥倖かもしれない。さらにこの二匹はもう子ゆっくりにまで成長していた。 もうそろそろ狩りに連れて行けるくらい身体が大きくなっている。 れいむの苦難と悲しみの時代は終焉を迎えつつある………ように見えた。 「ゆゆ~~ん!おかあさん、ゆっくりただいまなのぜっ!」 「かわいいれいみゅがかえってきたよぉ!」 「ゆんっ!ゆっくりおかえりなさいだよおちびちゃんたち!」 「きょうもたいりょうっなのぜっ!まりちゃかりのてんさいでごめ~んね!なのぜぇ~~♪」 「れいみゅもたいりょうっだよ!ゆっくりかりのせいかをみていってね!」 (ゆ、ゆん……れいむのおちびちゃんたちこんなにりっぱになって……) れいむの目元に思わず涙が光る。 最後に残った二匹のおちびちゃん達は見事に大人のゆっくりへと成長しつつある。 数多の姉妹たちの犠牲の末に……生き残った二匹は亜成体ゆっくりになっていた。 今では子供たちが狩りをしてれいむを養おうという勢いだ。 (まりさ、おそらのゆっくりぷれいすでみてる?れいむはちゃんとやくそくっを果たしたよ……! れいむとまりさのおちびちゃんは、こんなにもりっぱにそだってるよぉぉぉ……!) 「ゆゆっ?どぼじておかあさんがないているのぜ?」 「おかあさん、まるでおちびちゃんみたいだよ!」 「ゆ、ゆん!こ、これはうれしなみださんなんだよ!おちびちゃんたちがこんなにもりっぱにそだってくれたからね!」 「ゆゆ~ん!それほどでもあるのぜ~~♪」 「おかあさんがれいみゅをゆっくりさせてくれたおかげだよ!ゆっくりありがとうね!」 「ゆふふ……」 れいむは再び幸せの絶頂に登りつめようとしていた。 失われたゆっくりをこの手に取り戻したという達成感に満ち溢れていた。 そう、この時…… 「ゆんっ!じゃあふたりともさっそくごはんさんにしようね!みんなでむーしゃむーしゃしようね!」 「むーしゃむーしゃするのぜ!そだちざかりのまりちゃはたくさんたべるのぜっ!」 「れいみゅもむーしゃむーしゃするよ!」 「じゃあちょっとまっててね!おかあさんがごはんさんをはっぱにもりつけ……」 この瞬間…… 「…………え?な、なに……?ごれ…………?」 ……れいみゅとまりちゃのおしりに『カビさん』を発見するまでは。 「おでがいじまずっ!おでがいじまずぅぅぅぅっ!おじびじゃんをたずげてくだざいっ! かびざんでとっでもくるじんでいるんでずっ!れいぶのさいごのおちびじゃんなんでず! おでがいじまずっ!おでがいじまずっっ!どうがっ!どうがおじびじゃんだちをたずげてぐだざいぃぃぃぃっ!!」 「ゆっ……ゆっ……」 「くるじいよぉぉぉ……ゆっぐじ……ゆっぐじぃぃぃ……」 数日後……表通りで通行人に物乞いをするれいむの姿があった。 不運な事にれいむの子供たちは揃ってゆカビに侵食されていたのだ。 それもかなり以前からじわじわと犯されていたようで発見が遅れたのが致命的であった。 カビを発見したその日かられいむは懸命に直そうと子供をぺーろぺーろしたが、 おちびちゃんの容態は悪化するばかり……とうとう身体の三分の二がカビに犯されてしまったのだ。 「おでがいじまずにんげんざんっ!ゆっぐじでぎるにんげんざんっっっ!どうがれいぶをたずげてぇぇぇぇぇっ!!」 あれほど関わり合いになるなとおちびちゃん達に教えた人間さんに助けを乞う日がこようとは。 れいむだって本当は人間なんかに何かを頼むなどしたくはない。 だが他にゆカビを治療する当てがないのだ。ゆカビは人間さんだけが治せるという言い伝えがある。 いくらむーしゃむーしゃさせても、すーりすーりしても、ぺーろぺーろさせても ゆっくりの力ではカビの治療は不可能だった。だったらもう人間に頭を下げるしかないではないか。 「れいぶにはもうこのごたちじかいないんでずっ!このごたちがれいぶのさいごのきぼうっなんでずっ! このごたちがえいえんにゆっくりしじゃったら、れいぶはもうにどとゆっくじできないんでず! だがらっ!だからおでがいじまず!おじびじゃんを……おじびじゃんをたずげでぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 今れいむは「この子供たちがれいむの最後の希望」と言ったが、この言葉は決してオーバーな表現ではない。 何故ならばまりちゃとれいみゅを失ったが最後、れいむにはもう子供を授かるアテなどないからだ。 子供がいなければれいむ種はゆっくりできない。子供を作る番が必要になるのだが…… れいむは番のまりさを亡くした後ずっと独り身を貫いてきた。だがそれは好きで貫いてたわけではない。 ゆっくりには再婚という概念がないのだ。 いやもしかしたら概念自体はあるのかもしれない……だが野良の世界では完全に形骸化してると言っていい。 何故か?それは現実的に再婚相手を見つけることが不可能だからだ。 ゆっくりが番を選ぶポイントはまず若いこと、そして美ゆっくりであること、あとは種同士の相性である。 相性とは例えばまりさ種はれいむ種もしくはありさ種と結びつきやすいといった事だ。 美ゆっくりかどうかはあまり問題ではない。何故なら身なりがきれいな野良ゆなどまず存在しないから。 気持ち美ゆっくりっぽく感じられればそれで全然おkなのだ。 となると最大のポイントはやはり若さである。 若くてそこそこ美ゆっくりっぽい感じのゆっくり同士が惹かれあって番となる。 れいむのような、もう何回も子供を産んだ年寄りのおばさんゆっくりなど及びでないのだ。 どうせ結婚するのなら若くて未使用な子がいい。ゆっくりはそー思う。人間だってそー思う。 ならあと可能性があるのは同じような境遇で同じぐらいの年齢の野良ゆっくり同士が再婚するパターンしかない。 しかないのだが……確率は天文学的に低いといわざるをえない。 まず野良ゆっくりが高齢になるまで生き延びる事すら稀であるし、 出会ったとしても日々の生活に疲れた老ゆっくりに色気を感じるなどさすがに野良ゆでもそうそうない。 熟年結婚など野良ゆっくりには縁が薄いものだといわざるをえない。 だから野良ゆっくりが番を娶るというのは一生に一度しかない重大な事なのである。 やり直しや後戻りは一切できないのだ。 それでも番さえ生きていれば、おちびちゃんを失ったとしても『また作ればいいよ!』で済んだはずだ。 だがその番であるまりさはもうこの世にいない。 もしれいむが番はいい、おちびちゃんだけ欲しいというのなら道はなくもない。 そこらへんの行きずりの野良ゆやレイパーありす相手にすっきりー!やれいぽぅをされればいいのだ。 だが結婚、出産、家族に少女漫画のような幻想を抱いているれいむにとってそれはゆっくりできない事である。 だからこの選択肢には始めから入っていない。 やはり……れいむにとって、ゆカビに犯された我が子がすべてであり、最後の希望なのだ。 この二匹を失ったられいむは今までなんの為にゆっくりしないで生きてきたのかわからなくなってしまう。 「おでがいじまずっ!おでがいじまずっっ!れいぶのおちびじゃんをたずげでくだざいっ!だずげてぐだざいっ!」 地面にガンガン頭を叩きつけて必死に懇願するれいむ。 だが通行人はみんなそんなれいむを完全に無視している。 わかりきっていた事だ。人間が野良ゆっくりに対して冷淡だという事は充分すぎるほどにわかり切っている。 それでも人間に頼むしかないのだ。万に一つの可能性に賭ける以外に方法などなにもない。 ここであえて言っておこう……れいむは妙に運がいい。 不運にもれいむを助けようとする希少種「愛でお兄さん」に出会う事はなかった。 だが同時に幸運にも「虐待鬼意惨」にも出会う事はなかったのだから。 「ゆっ……ゆっ……もっと……ゆっくじ……」 「ゆっくじ……じた…か……た……」 「ゆっ?お、おちびじゃ……おちびじゃん?お、おへんじしてね?おかあさんにゆっくりおへんじしてね? もうすぐにんげんさんがたずげてくれるがらね?だ、だがらもうすこしだけ……が、がまんじで……がまん……」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ………ゆんやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」 結局れいむはすべてのおちびちゃんを失ってしまった。 それからのれいむはまさに抜け殻……のそのそと放心状態でおうちに戻った後はもう一日中、 路地裏のダンボールハウスの中で腐った魚のような目をしてボーとしているだけであった。 (もうれいむにはなにもないよ……もういやだよ……いぎでるのがつらいよ……) だがこの路地裏をよく見ると、無気力な生きる屍と化しているのはれいむだけではなかった。 いくつかダンボール箱があり……その中にれいむと同じような野良ゆっくり達のなれの果てがいるのだ。 「とかいば……おちびじゃん……」 「わがらないよー……もうなにも……わがらないぃぃ……」 「むきゅ……きゅ……」 まるで姥捨て山か。この薄暗い路地裏は番とおちびちゃんを軒並み失って 夢も希望もすべてなくした高齢野良ゆっくりの墓場と化していたのだ。 おうちの中でれいむはだんだんと濁ってぼやけていく思考でゆっくりと考えていく。 今まで自分が歩んできたゆん生を…… (れいむは……このままえいえんにゆっくりしちゃうのかな……?べつにそれでもいいよ……でも……) れいむは思う。 (このせかいさんは……つよすぎるよ……れいむはいつもむりょくかんでいっぱいだったよ…… ひとりだちするころにはもう……わかってたよ。もってうまれたものの……どうしようもなさ…… かいゆっくりになんかなれない……しあわせーなあまあまだってぜったいにたべられないんだ…… わかってたよ……れいむはぜんぶぜんぶ、ゆっくりりかいしてたよ……) さらにれいむは思う。 (でも……それでも……れいむにはゆめがあったよ……! かぞくがほしかったよ……まりさと、おちびちゃんとゆっくりしたかったんだよ……! でもそれがきびしかったよ……かなしかったよ……! だって……さいしょのおちびちゃんにはさきだたれて……まりさもいなくなって…… まるでせかいさんにおしつぶされていくようなきもちだったよ……!でも……でもれいむは……!) さらにさらにれいむは思う。 (れいむはせかいさんにこうさんっしなかったよ……!れいむはたたかったよ……! たたかったはずだよ……だから……れいむはなにかになれたのかな……?おそらにいるひと……かみさま…… そうでしょ……?たしかにれいむは……なにもつかめなかったけど……なにものこらなかったけど……でも……) ……くり……て…… (ゆっ……?) ゆっ……し……いってね…… (なにか……なつかしいこえがきこえるよ……かんじるよ……わかるよ……あったかい……なにか……) ゆっくりしていってね!れいむっ (まりさ……) おきゃあしゃん、ゆっくちちていっちぇにぇ! (れいむのおちびちゃんたち……) ゆっくりしていってね!みんないつまでもいっしょだよっ! (あーーあ……あったかいよぉ……さいごのさいごに……いいきもち………あったかい……さいごのさいご…… みんなのゆっくりで……すごくあったいかよ………れいむ……もうじゅうぶん……ゆっくりした……よ……) 翌朝……路地裏に放置されている薄汚いダンボール箱の中にかつてれいむだった、野良ゆっくりの死体があった。 けして幸福とはいえなかった生涯を送ったれいむではあったが、不思議とその死に顔はゆっくりに満ち溢れていたという。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/175.html
「愛で」タグがついてますが、純粋な「愛で」ではありません。 むしろ虐待です。 ----------- 私はゆっくりれいむが大好きだ。 3匹も飼いゆとして手元においておくほどだ。 あの中途半端にキリッとした顔が。 二つの揺れるもみあげが。 キューティクルな光り輝く黒髪が。 紅白の鮮やかなコントラストのリボンが。 もう可愛くて可愛くて仕方がない。目に入れても痛くないほど。 だから私は愛でる。 ああ、ゆっくりまりさとして生まれて、れいむと死ぬほどすっきりしたかったなあ。 そんなことを思うほどだ。 生まれなかったものは仕方ないから、嘆いていても始まらない。 自分に出来る愛で方をする他ない。 よし、すーりすーりだ。 3日剃っていない無精髭がジョリジョリした自分の頬だが、まあいいだろう。 愛でる際には関係ない。愛でる気持ちが大事なんだよ。 れいむを抱え、一心不乱にもちもちとしたほっぺにすーりすーりする。 ああ、幸せ… すーりすーり 「ゆ?おにいさん?いきなりなにするの?やめてね。」 すーりすーり。 「おひげさんがちーくちーくしていたいよ、やめてね、やめてね!」 すーりじょーり。 「いだいいいい!やめてっていってるでしょおおおお!!」 じょーりじょーり 「なにしてるのおおおお!れいむ、れいむ、しっかりしてねええええ」 「れいむううう!!」 「ゆぎゃあああああ!じぬ、じんじゃうううう!ああああああ!ぼうだめえ……」 じょーりじょーり 「……」 「でいぶうううう!しんじゃだめええええ!!!」 「おにいさん!!!でいぶしんじゃうよおおおお!?やめてあげてねええええ?」 じょーりじょーりじょーりじょーりじょーりじょーり おっと、またすりおろしてしまったか。 愛ゆえに、れいむはすりおろさらねばならぬ。愛ゆえに… ふざけてる場合じゃなかった、やめないと本当に死ぬ。 オレンジジュースで回復させると、剥がれかけた肌が瞬間的に治っていくが、そんな様もいとおしい。 「ゆひぃ、ゆひぃ……」 しかし、満足いくまですりすりできたかというと、ハッキリ言ってできない。 ゆっくりは脆いのだ。 自分勝手な愛で方をするとすぐに死んでしまう。 私が満足いくすーりすーりをする前に死んでしまうだなんて弱すぎるにもほどがあると思うが、ゆっくりとはそういうものだ。 仕方がない。 しかし「仕方がない」で諦められないのが私こと愛で兄さん。 ある日気がついた。 どんなにすーりすーりしても死なないようなれいむがいればいいのだ、と。 しかしそんなれいむがいるか? いるとは思えない。 だとすれば、今居るれいむを、そのようなれいむにしてあげるのが筋ではないか。 すーりすーりするたびにれいむを瀕死に追い込むのが愛? そんなはハズはない。 すーりすーりされようともヘコタレないようにしてあげるのこそ愛だ。 そこでホームセンターで買ってきたのがこれ。 ニスである。 そう、れいむにニスを塗りたくれば表面が保護され、いくらでも愛でれるれいむに変貌するであろうという考えである。 まあとりあえずやってみよう。 まず、新聞紙を床に広げる。 次にニスの容器とハケを新聞紙の上に置く。 そして、「ゆぴー、ゆぴー」などと言って寝ている可愛いれいむを素早く持ち上げ、逃げ出さないように足の裏の間に挟む。 準備完了だ。 れいむの表面についている大きなゴミを取るため、まずは乾いたハケで大まかに表面全体をなぞる。 さーわさーわ 「ゆぴー、ゆぴぃ、ゆ?なんだかくすぐったいよ?」 さーわさーわ 「あにゃるをさーわさーわしないでねえ!」 さーわさーわさーわさーわ 「ん?んほおおおおお!?れいむすっきりするよおおおお!!」 おっと、少しやりすぎた。すっきり液を分泌されてはニスの効果が落ちてしまう。 ハケを止めた。 「すっk…なんでやめるのおおお!?かわいいれいむがすっきりしそうだっていってるでしょおおおお!?」 本番作業だ。ハケをニスの箱に漬け、丁寧にれいむの表面をコーティングする。 べちょっ 「す、すっきr…ゆぎゃあああああ!!にがいいいいい!!!からいいいいいい!いだいいいい!なにごれええええええ!!!!」 おいおい、ほっぺたしかまだ塗ってないぞ。 舌についてないのに味がわかるのか?無駄に高性能だなあ。 しかしこれも愛するがゆえ。我慢してくれ。 ぬーりぬーり 「やめでえええ!はなじでええええ!がらいよおおおおお!」 「がらい!!にがい!!ほんどうにがらいいいい!!でいぶじんじゃうううう!!」 口に入ったみたいだが、こちらには目的がある。苦しいのは今だけのはず。作業続行だ。 ぬーりぬーり 「!!おめめがいだいいいいい!」 「でいぶのおべべがみえだいよおおお!?なにごれえええ!!?」 目まで来たか。もうちょいだ。 ぬーりぬーり 「ゆぎゃあああああ!ゆごおおおおおお!ゆげえええええ!!」 れいむの大絶叫はとどまる所を知らず、くるしーしーとうんうんは漏れっぱなしだ。 …なんてこった、しーしーやうんうんなど漏らされてはニスの効果が落ちてしまう。 失敗したなあ。 こうなったらドライヤーの出番だ。 しーしー穴、あにゃるにニスを厚めに塗り、すかさずドライヤーで乾かし、塞ぐのだ。 先にやっておくべきだった。 気を取り直し観察すると、れいむは小さな穴からぴゅっ、ぴゅっとくるしーしーを吹き出している。 やはりしーしー穴の奥には膀胱のようなものがあるのか? 塗るだけじゃだめじゃないか。 そこで、膀胱があってもいいように、注射器にニスを詰めてしーしー穴に注ぎこみ、素早くドライヤーを吹きつけ、乾かす。 「ゆげえええ!ぐるじいいいいい!しーしーあながらなにかはいっでぐるうううう!!」 ゴォォォオオオ! 「!?なんでじーじーでないのおおおおお!?ぐるじいでじょおおおおおお!?」 しーしーを出すことで苦痛を軽減していたようだ。 とにかくしーしー穴封じには成功。 同じようにあにゃるも処理する。 そして全体を乾かす。 「おべべがいだいよ……じーじーでないよ……」 「うんうんでないよ……」 「がらいよ、いだいよ、ぐるじいよ……」 ゴォォォオオオ! 「む、むぐ!?……」 ついにニスが固まって口を動かすことすら困難になったようだ。 ほぼ完成といえるが、油断はできない。 三度塗りほどしておこう。 もうこのころになると、れいむのかわいい悲鳴も聞こえない。 口が動かせないのだから当然か。 そしてついに、はた目には蛍光灯の光を受けて光り輝く、苦悶の表情のゆっくりれいむの剥製が完成した。 おりぼんも紅白がよりしっかりしているし、髪も光り輝いている。 もみあげも今にもぴこぴこしそうな躍動感がある。 我ながらいい出来だ。 強いて失敗点を挙げれば、塗りムラがちょっとあること位かなあ。 まあ、しかし概ね当初の目的は達せられたと思っていい。 なにしろすーりすーりし放題のゆっくりれいむを手に入れたのだから。 ニス臭いのは愛で乗り越える! 毎日の朝起きての日課として、他の2匹の前で公然と剥製れいむにすーりすーりをする。 今回ニスを塗られなかったれいむ達は心底怯えた表情でこちらを凝視している。 すーりすーり 「や、やめてあげてね…」 「こ、こわいよおおお」 「……」 すーりすーり 「ん?やめてって言ったの?じゃあやめて、お前にすーりすーりしようか?」 すーりじょーり 「ごべんなざいいい!そのれいむにすーりすーりしていいですがられいむだけはだずげでぐだざいいいいい」 「れいむのほっぺはぎもぢよぐないでずううう!」 2匹ともしーしーを漏らしっぱなしだ。意味が分からないが、かわいいなあ、オイ。もっとやろう。 じょーりじょーり 「うん、だからこいつにすーりすーりしてるんじゃん」 「ゆヒィ…」 じょーりじょーりじょーりじょーりじょーりじょーり 片方のれいむはなぜか気絶したようだ。なんだってんだ? 最近ふと見ると剥製れいむのほっぺはもうえぐれて餡子が見えている。 じょーりじょーりのし過ぎだろうが、構いやしない。 苦悶の表情もさらに磨きがかかっているような気もするが、錯覚だろう。 身動きも取れないまま身がえぐれて死ぬまで何ヶ月も痛みを感じ続けている… いやいや、考えすぎだよね。 愛だよ、愛。 さーて、次は残りの2匹をどんな風に愛でてあげようかなあ? ----------- 既作 anko1940 狂牛 anko1952 ゆイアン・メイデン
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1218.html
「ブサイクれいむ」 ―― 1 ―― 8畳の洋室の隅にある、『れいむのおうち』と殴り書きされたダンボール。 ビニールボールやら新聞紙やら、遊び道具になりそうなものが放り込まれている。 その中に差し込む朝日を浴びて、れいむは目を覚ました。 「ゆゆ……ゆっくりしていってね!!」 巣にはれいむ以外誰もいない。何故なら、ここはれいむだけのおうちだから。 外からはチュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえる。鳥は、れいむよりもずっと早起きだ。 「ゆ! おなかがすいた! あさごはんをたべるよ!!」 ゆっくりは総じて燃費が悪い。 れいむのお腹は先程からぐ~ぐ~鳴りっぱなしだ。 ナメクジのように這いずって、れいむは巣から顔を覗かせる。 そこでは、飼い主であるお姉さんがテーブルで朝食をとっていた。 「あら? 今日は早いのね」 「ゆゆっ!!」 にっこり微笑むお姉さん。 それにつられて、れいむもキリッと眉毛を吊り上げて笑う。 だが、その笑顔は次の一言で崩れ去った。 「おはよう、ブサイクれいむ」 「ゆぅ……」 微笑を崩さないお姉さん。 その言葉を聞いた途端、れいむは悲しげな顔をして俯く。 「どうしたの? ブサイクれいむ? 朝の挨拶は?」 れいむの顔を覗きこみ、にこやかに問いかけるお姉さん。 ゆっくりできない。こんな挨拶はゆっくり出来ない。 それでもれいむは、お姉さんに逆らう事が出来ず…… 恐る恐るお姉さんを見上げながら、ぎこちない笑みで言葉を返した。 「ゆ……ゆ、ゆっくりしていってね!」 「はい、よく出来ました。さぁブサイクれいむ、朝ごはんにしましょう」 そんなれいむの顔を見て、お姉さんも満足げな笑顔を浮かべる。 とても幸せそうな、とても綺麗な、充足感に満ちた表情だ。 “ブサイクれいむ” れいむがこんな風に呼ばれたのは、今日が初めてではなかった。 ◆ れいむは、ペットショップで中レベル品質のゆっくりとして売られていた。 3ヶ月前に今の飼い主であるお姉さんに買われ、今はこうしてペットとして生活している。 そんなれいむは、生まれながらの美ゆっくりだった。 街を歩けば全てのゆっくりが振り返るぐらいの、美しいゆっくりだった。 れいむ自身も、自分の美貌に自信を持っていた。 そして、その美貌でお姉さんをゆっくりさせてあげたいとも思っていた。 飼われ始めた当初は、お姉さんもゆっくりしてくれた。 れいむはとても可愛いから、とてもゆっくりできる……そんな風に言ってくれた。 だが、いつからだろうか。お姉さんは変わった。 前触れもなく、こんなことを言うようになってしまったのだ。 『ねぇれいむ? どうしてあなたはそんなにブサイクなの?』 当然、最初は反論した。 『れいむはブサイクじゃないよ!! とてもゆっくりできる、かわいいれいむだよ!!!』 でも、半月ぐらいで反論する気力を失った。 自分がブサイクであることを否定するたびに、言葉で表すことが憚られるほどの虐待を受けたからだ。 『れいむはブサイクだから、私が捨てたら生きていけないわね。誰も飼ってくれないもの』 『私は優しいから、ブスなれいむでもちゃんと養ってあげるから、安心してね』 『あなたがこんなにブサイクなのだから、きっとあなたのお母さんはもっとブサイクなんでしょうね』 『ブサイクじゃない子と区別できるように、今日からあなたを“ブサイクれいむ”と呼ぶことにするわ』 いつからか、れいむは“ブサイクれいむ”と呼ばれるようになった。 お姉さんは、優しくてゆっくり出来る人だ。 ご飯は3食満足に食べさせてくれるし、時間が許す限り遊んでくれる。 歌が上手いと褒めてくれるし、夜一人で眠るのが怖いときは一緒に眠ってくれる。 お姉さんの手に撫でられると、れいむはとても安心できる。 そういう時、れいむはとてもゆっくりできるのだ。 だけど、たまにゆっくりできない時がある。 お姉さんが、れいむを“ブサイクれいむ”と呼ぶ時だ。 れいむはブサイクだ。れいむはブスだ。 こんな顔面崩壊ゆっくりは、野生じゃ誰もつがいになってくれないだろう。 だから、私のペットになれてよかったね。養ってもらえてよかったね。 でも子供は産ませないからね。こんなブサイクから生まれるなんて、子供が可哀相すぎるから。 れいむの心を、深く抉る言葉。 その言葉を、お姉さんはいつもと変わらぬ笑顔で、まるで褒め言葉のように放つ。 れいむの歌を褒めてくれるときと、れいむと一緒に眠ってくれるときと。 まったく同じ笑顔を浮かべて、お姉さんは繰り返しれいむの心を傷つけていくのだ。 ◆ 「むーしゃむーしゃ……」 お洒落な書体で『Reimu』と書かれた小さな器に、細かく砕いたお菓子が盛られている。 ゆっくりにとって最高のご馳走。野性の世界では、殆ど手に入れられない代物だ。 一口含んで噛み砕くたびに、れいむの口の中に例えようのない甘味が広がる。 だが、あの言葉が出てこない。 心を満たす幸福を更なる高みへ昇華させる、本能に刻み込まれた『しあわせ~!』が出てこない。 「どうしたのブサイクれいむ? 美味しくないの?」 お姉さんが、心配そうにれいむの顔を覗きこむ。 彼女の表情は、本当にペットを心配している飼い主のそれだ。 れいむを“ブサイクれいむ”と呼ぶことへの躊躇いや罪悪感は、まったくないのだろう。 「ゆ、ゆゆ……ゆっくりおいしいよ! とてもゆっくりできるあまあまさんだよ!!」 自分がかわいいゆっくりであるという意識が、言葉を詰まらせる。 決して反論してはいけない。思い出すのも躊躇われるぐらいの仕打ちを受けることになるからだ。 「そう、ならいいのだけど。たくさん食べて大きくなってね」 「ゆゆ!! ゆっくりりかいしたよ!!」 れいむにとってお姉さんは、すごくゆっくり出来る飼い主さんだ。 美味しいご飯をたくさん食べさせてくれるし、一緒に遊んでくれる。 れいむの歌を上手だと褒めてくれるし、一緒に歌の練習もしてくれる。 だけどここ数ヶ月で、れいむが心からゆっくりできたことは一度もない。 お姉さんの中で“かわいいれいむ”が“ブサイクれいむ”になってしまった、あの日から… 淡々と、繰り返しれいむの心を傷つけるあの言葉があるから、ゆっくりできるけどゆっくりできない。 あの言葉さえなければ、れいむは――― 「さ、お姉さんはお出かけしてくるから、ブサイクれいむはお留守番お願いね」 ―――もっとゆっくりできるのに。 ―― 2 ―― お姉さんは、昼頃に帰ると言い残して、外に出て行った。 きっと狩りに出かけたのだろう、とれいむは思った。 ゆっくりしているけど、ゆっくりできないお姉さん。 綺麗で優しいけれど、れいむを“ブサイク”というお姉さん。 お姉さんがいない間は、寂しいけれど心が落ち着く。 ゆっくりできないけれど、少しだけゆっくり出来る。 「れいむは……ブサイクじゃないよ」 誰もいないのに、誰かに訴えかけるように呟く。 お姉さんの言葉への反論が許されるのは、お姉さんがいないときだけだ。 「れいむは……かわいいんだよ…ブサイクなんかじゃないんだよぉ!!」 生まれてすぐ、れいむの顔を見たお母さんは『かわいいおちびちゃんだね!!』と言ってくれた。 ペットショップの店員さんも、こんな美れいむは今まで見た事がないと褒めてくれた。 お姉さんだって、最初は綺麗で可愛いと言ってくれたのに…… 「ゆっぐぅ……ゆっぐぃ……ゆっぐり゛い゛い゛ぃい゛い゛ぃい゛ぃぃぃぃ!!!!」 悔しくて、泣いた。 ゆっくりできるゆっくりだと。かわいいゆっくりだと、認めてもらえないのが悔しくて、泣いた。 そして、お姉さんがいない時にしか泣けないのが悔しくて、さらに泣いた。 お姉さんは、ゆっくりさせてくれる。だけど、認めてくれない。 美味しい食べ物をたくさんくれるし、一緒に歌ってくれるし、一緒に遊んでくれる。 だけど、れいむの可愛さだけは認めてくれない。ゆっくりとしたゆっくりだと、認めてくれない。 『こんなに美味しいご飯を毎日食べてるのに、ブスのままだなんて……とっても可哀相!』 『れいむはお歌が上手なのね。ブサイクなのに』 『あなたみたいなブサイクは誰も遊んでくれないでしょうから、お姉さんが遊んであげるね』 それだけで、れいむはゆっくりできなくなるのだ。 自分の誇る特徴を、それと認めてくれないだけで…… そろそろお姉さんが帰ってくるかなと、れいむが思い始めた頃。 こつんこつんと、ガラス戸を叩く音が聞こえた。 ボールを噛んだり蹴ったりしながら暇を潰していたれいむは、好奇心に誘われて音のしたほうへ跳ねていく。 カーテンの隙間から、顔を覗かせると…… 「ゆゆっ!! ゆっくりしていってね!!! まりさはまりさだよ!!」 そこには、野生のものと思われるゆっくりまりさがいた。 金髪と黒い帽子が特徴の、れいむと並んで最も数の多い種類である。 すごくゆっくりできそうなまりさだ。れいむはそう思った。 「ゆゆーー!! れいむはれいむだよ!! ゆっくりしていってね!!」 散歩の時以外で他のゆっくりに遭遇するのは、とても珍しいことだ。 ぴょんぴょん跳ねてアピールするまりさに、れいむは喜びながら同じポーズをとって応じた。 「ゆぅー!! れいむはとってもきれいだね!! ゆっくりできそうなれいむだね!!」 「ゆゆっ!? ゆふふ!! てれるからゆっくりほめないでね!!」 頬を赤く染めながらも、れいむの心は幸福で満たされていた。 こんな風に、周囲のゆっくりはいつもれいむのことをかわいいと褒めてくれる。 散歩の途中で人間さんに会ったときも、同じように褒めながら頭を撫でてくれる。 れいむの事をブサイクだというのは、お姉さんだけなのだ。 「ゆぅ……かべさんがいじわるしてるよ!! れいむといっしょにゆっくりしたいのにぃ!!」 まりさは頬を膨らませながら、どんどんとガラス戸に体当たりしている。 どうしよう、このままではガラス戸が壊されて……お姉さんが困ってしまうかもしれない。 そう思ったれいむは、まりさを止めることにした。 「ゆっくりやめてね!! かべさんをこわしたら、おねえさんがこまるよ!!!」 「ゆゆぅ? おねえさん? それってゆっくりできるもの?」 「おねえさんはゆっくりできるひとだよ!! だからかべさんをこわさないでね!!」 「ゆん!! ゆっくりりかいしたよ!! かべさんをこわさないで、ゆっくりするね!!」 それから2匹は、ガラス越しに頬を合わせながらゆっくりすることにした。 本当のすりすりに比べればゆっくりできないけど、これでも十分ゆっくりできる。 好きな食べ物とか、好きな遊びとか、好きな歌とか、いろんなことについて話しながらゆっくりした。 そして、20分ぐらい経って… 「ねぇ、れいむ?」 「ゆ? なぁに?」 「まりさは、れいむとずっとゆっくりしたいよ!!」 それは、ゆっくりにとっての愛の告白だった。 出会って20分程度しか経過していないが、それはゆっくりにとって愛情を確信するのに十分な時間だった。 もじもじしながら俯いているまりさを見て、れいむは考え始める。 まりさはとてもゆっくりしている。れいむをかわいいと褒めてくれる。 だから、れいむもまりさとずっとゆっくりしたい。 だけどお姉さんは……そのことを許してくれるだろうか? まりさと一緒に暮らすことを、お姉さんは認めてくれるだろうか? そうだ、お願いしてみよう。 こんなにゆっくりしたまりさだから、ちゃんとお願いすれば許してくれるに違いない。 「ゆゆ!! れいむもまりさとゆっくりしたいよ!!」 「ゆぅー!!! ありがとう!! ゆっくりしていってね!!」 れいむは、まりさの告白を受け入れた。 だが、一緒に暮らすのはお姉さんの許しを得てからだ。 「ゆっくりまってね!! おねえさんにおねがいしてみるからね!! ゆっくりするのはそれからだよ!!」 「ゆっくりりかいしたよ!!………ゆっ?」 告白を受け入れてくれただけでも嬉しい。 全身を駆け巡る幸福に身を弾ませていたまりさは………れいむの背後に現れた大きな影に気づいた。 その影は、自らの手でカーテンを退かし、鮮明な姿を現した。 “影の正体”は足元のれいむに目をやると、視界の端に入り込んだ黒い物体―――まりさに視線を移した。 「ブサイクれいむ? こんなところで何をしているの?……って、あらら、野良ゆっくりが泥棒に来たのね」 「ゆっ!? おねえさん!? おかえりなさい!」 れいむに微笑みかけたお姉さんは、まりさに目を向けても表情を変えなかった。 驚きの声を上げながら、れいむはお姉さんの顔を見上げる。 「ゆゆぅ!! このひとがおねえさんなの? ゆっくりー!!」 生まれつきのふてぶてしい笑みを浮かべて、まりさはぴょんぴょん跳ねた。 れいむの言ってたとおり、このお姉さんはとてもゆっくりできそうだ。 そう思って、喜びのあまりドンドンとガラス戸に体当たりする。 「まったく、うるさいわね。これだから野良は……」 「ゆっくりぃ!! おねえさん!! れいむはおねがいがあるよ!!」 「ちょっと後にしてくれる? お姉さんはこのまりさとお話があるから、ブサイクれいむは向こうのお部屋で待っててね」 そう言うと、お姉さんはガラス戸を開けてサンダルを履き、庭へと出て行った。 分厚いカーテンを閉め、戸もぴしゃりと閉められてしまって、れいむからは外の様子を見る事が出来ない。 でも、きっとまりさのほうからお話をしてくれて、お姉さんも同居を許してくれるだろう。 れいむはそんな風に、楽観的に考えていた。 だが、その外では“お話”など行われていなかった。 「ささ、泥棒さんは出てってちょうだい。二度と戻ってきちゃ駄目よ」 「ゆゆ!? やめてね!! おはなしをきいて――― 問答無用でまりさを鷲づかみにし、そのまま塀の向こう側へ放り投げる。 事が片付いたと安心しきったお姉さんは、微笑を浮かべたまま家の中へ戻ろうとしたが…… 「ゆっくりまってね!! おはなしをきいてね!!」 まりさは、塀の下部に空いている小さな穴から、ひょっこりと顔を覗かせた。 そのままずりずりと這いずり、再び庭の中へ入り込む。 「まりさはれいむとずっとゆっくりしたいよ!! おねがいだよ!!」 ぴょんぴょん跳びはねながら、まりさは甲高い大声を放つ。 それに反応して振り向いたお姉さんの顔は、笑っていなかった。 まるでお面を被っているかのように、ピクリとも動かない……感情の篭っていない顔。 「もう二度と言わないからよく聞きなさい。“5秒以内”に、私の家から出てって」 「ゆっ!? どうしてそんなこというの!?」 会話など成り立っていなかった。 通常と違うのは、その原因がゆっくりではなく、人間である“お姉さん”だということ。 彼女は一切の無駄を許さず、自分の意思に従って着々と行動している。 「5……4……」 「おねがいだよ!! れいむもまりさとゆっくりしたいっていってたよ!!」 お姉さんは、まりさの言葉に耳を傾けようとはしない。 彼女にとって、まりさは最初から“排除するべき野良ゆっくり”なのだ。 「3……2……」 「ゆっくりきいてよ!! れいむはとてもかわいいゆっくりだったよ!! そんなかわいいれいむと、まりさはすごくゆっくりしたい!! ゆっくりしたいんだよおおおおおぉぉ!!!」 声を張り上げるまりさ。 お姉さんは、それとは無関係に背後を振り返る。 「1……」 そして、ガラス戸もカーテンも完全に閉められていることを確認すると――― 「……ゼロ」 拳を大きく振り上げた。 ―― 3 ―― 言いつけどおり、隣の部屋でゆっくり待っていたれいむだったが… お姉さんとまりさのお話がどうしても気になるので、庭に面した部屋に戻ってきてしまった。 盗み聞きは良くないことだとわかっているが、今回ばかりは我慢できないのだ。 「ゆっ! そろーりそろーり……」 カーテンは光を殆ど遮断してしまうので、2人の姿はよく見えない。 れいむはゆっくりとカーテンに近づき、聴覚を研ぎ澄ます。 その瞬間…… ゴッ!! ゴッ!! ゴスッ!!! 鈍い音が、3回連続した。 「どぼ**********!!! がぼ**~~~****~~~~!!!!」 誰かが庭で物凄い大声で叫んでいる。 だが、ガラスとカーテンを隔てたれいむには聞き取れない。 ドンッ!! ドンッ!! ドスンッ!!! 何かでやわらかい物を殴るような、そんな音だ。 「ごっ****~~~~!!!! ゆっぐり*********!!!!」 「ゆゆぅ? なんだかゆっくりできないよ!?」 鈍感なれいむも、不穏な雰囲気を感じ取った。 カーテンの向こう側で、誰かがゆっくり出来なくなっている気がする。 だけど、怖くてカーテンの向こう側を覗く事が出来ない。 「こわいよ!! ごあい゛よ!! ゆ゛っくり゛させて!! お゛ね゛え゛さああ゛ぁぁぁん!!!」 そのお姉さんは、カーテンの向こう側だ。 もしかしたらお姉さんも、何者かの手によってゆっくり出来なくされるかもしれない。 そう思ったれいむは、怖くて怖くてたまらなくなり、その場で震えていることしか出来なくなった。 ゴスンッ!! ドスンッ!!! バキィッ!!! 「****~~~~!!! ** **~~~!!」 ガッ!!! ドッ!!! ゴッ!!! 「* *** * 」 バコッ!!! ゴスッ!!! ズドンッ!!! 「** * 」 音は鳴り止まない。 だが、叫び声はだんだん弱くなっていって…… ズドッ!!! ゴスッ!!!! 「 」 ……そして、聞こえなくなった。 「ゆゆゆゆぐぐぐぐぐぐぐりりりりりりりりいぃいいぃぃぃぃい?????」 もしかして、まりさもお姉さんもゆっくりできなくなってしまった? 頭に浮かんだ最悪の光景に恐怖して、れいむはまともに喋ることもできない。 歯茎をむき出しにしたまま、驚愕の表情でガクガクと震えている。 そんなれいむの目の前に…… ガラガラガラガラ 「あら、いつも以上にブサイクな顔をしてどうしたの?」 ガラス戸を開けて姿を現したのは、お姉さんだった。 全身を見渡しても傷一つなく、その綺麗な顔はいつもと同じように微笑んでいる。 手についた黒い何かをパッパッと払いながら、涙でくしゃくしゃになったれいむの顔を見下ろした。 「おねえええざああぁああぁっぁあん!!! ごあがっだよおおおおおぉぉおぉぉ!!!」 れいむは勢いよく、お姉さんの胸に飛び込んだ。 そんなれいむを、優しく抱きしめてくれるお姉さん。 れいむをブサイクだというけれど、やっぱりお姉さんは優しくてゆっくりできる。 「もしかして、怖がらせちゃった? 大丈夫よ、あんなのお姉さんが追い払ったから」 「ゆやああぁあぁあぁあぁっぁああん!!!!…………ゆっ? いまなんていったの?」 「“あんなのお姉さんが追い払った”って言ったのよ? あのまりさ、泥棒に来た悪いゆっくりだったから」 「ゆゆっ!?!?」 れいむは理解できなかった。 あのまりさは、あんなにゆっくりしていたのに。そのまりさが、泥棒? 「どうしたのブサイクれいむ? お姉さん、何か変なこと言った?」 「ま、まりさはどろぼうさんじゃないよ!! とてもゆっくりできるまりさだよっ!!!」 あのまりさはとてもゆっくりしていた。泥棒なんかじゃない。 なのに、泥棒と間違えて追い払ってしまうなんて……! 「まりさをゆっくりつれてきてね!! まりさはわるくないよ!! いいものだよ!!!」 「はいはい、もうおうちに戻りましょうね」 れいむの心からの叫びを、お姉さんはまともに聞こうとしない。 力任せに、れいむを巣に押し戻そうとする。 でも、れいむは諦めなかった。力いっぱい、お姉さんの手を押し返す。 「ゆっくりはなしをきいてね!! だって――― その時、れいむはお姉さんの背後に転がっている黒い帽子に気づいた。 白いリボンがアクセントの、高く尖った黒い帽子。 あれ? あの帽子……つい最近、どこかで見た気がする。 「ゆゆぅっ!!!」 れいむはお姉さんの手から離れ、庭の真ん中に落ちている帽子へと駆け寄る。 舐め回すようにその帽子を眺めながら、必死になって記憶を辿っていく。 そして、思い出した。つい数分前の、ゆっくりとした光景が思い浮かんだ。 「これはまりさのぼうしだよ!!! どうしてここにおちてるの!?」 お姉さんはため息をつくと、苦笑いしながら答えた。 「まりさが泥棒だからよ」 「ちがうっていってるでしょ!? まりさはどろぼうさんじゃないよ!!!」 「じゃぁ、どうしてその帽子が落ちたままなの? どうしてまりさは、取りに戻ってこないのかしら?」 にこりと笑って、首を傾げるお姉さん。 れいむは思考がついていかず、言葉を失ってしまった。 「きっと、ここに戻ってこれない理由があるのね。じゃぁ、その理由は何かしら?」 「ゆゆぅ………そ、それは……」 「まりさは帽子を失くしても逃げなければいけなかった。 何故ならまりさは泥棒で、悪いゆっくりだから……見つかったら捕まってしまうから。だから逃げたの」 れいむは、反論できなかった。反論する頭などもとからない。 俯くれいむを見て、お姉さんは満足そうな顔をする。 「ほら、いつだってお姉さんは正しいのよ? 今まで私が間違ってたことって、ある?」 「ゆっ………」 れいむを抱え上げて、お姉さんは家の中へ上がる。 お姉さんの胸の中。れいむの一番安心できる場所だ。 だけど、今はそんな気分じゃなかった。 大好きなまりさが、悪者呼ばわりされているから…… 「ねぇ、ブサイクれいむ? 冷静に考えてみて。あなたはあのまりさを良いゆっくりだと言ってるけど…… あなたを“かわいいれいむ”だなんて言うお馬鹿さんが、良いゆっくりなわけないでしょう?」 「ゆゆっ!? そんなことないよぉっ!!!」 今までで一番の、力強い否定。 これ以上、まりさを悪者呼ばわりされるのは我慢できなかった。 れいむをかわいいと言ってくれた、ゆっくり出来るれいむだと褒めてくれた。 そんなまりさを、これ以上ゆっくり出来ないモノにされたくなかったから。 だが、勢いに任せて放った言葉は、決していい結果を導かない。 パァアン!!! 「ゆびぃっ!?!?!」 何かが破裂するような音。 直後、れいむの左頬が真っ赤に染まる。 「言いなさい。何が“そんなことない”のかしら?」 お姉さんの顔は、笑っていなかった。 それを見上げると同時に、先程叩かれた時の痛みが餡子を伝って全身に広がっていく。 ビクビクと身体を震わせて、だらだら涙を流している。 「ゆ゛!? い゛だいっ!! い゛だい゛よ゛ぉーー!!! ゆ゛ゆ゛ぅーーー!!!」 「お姉さん、何か間違ったこと言った?」 パアァンッ!!!! 今度は右頬が叩かれた。 両頬を真っ赤に腫らしたれいむに、お姉さんは鼻先が当たるくらいに顔を近づける。 そして、れいむのまん丸な目を凝視し、無表情のまま問いかけた。 「ゆびぃっ!! ゆびぃーーーっ!!! ゆ゛あ゛ぁーーー!!」 「言って御覧なさい? 何が違うのかしら? まりさが悪いゆっくりだってこと? それとも、あなたが“ブサイクれいむ”だってこと? どっちなの?」 れいむは答える事が出来なかった。 お姉さんが、笑っていなかったから。 笑っていないときのお姉さんは、とても怖いから。 どっちが正解なのだろう? いったいどちらを選んだら、お姉さんは痛いのをやめて、優しいお姉さんに戻ってくれるのだろう? 「ふーん、迷ってるのね」 「ゆぅうぅぅ……」 お姉さんから視線を逸らし、小さく唸るれいむ。 そんなれいむを見て困ったようなため息をついたお姉さんは、れいむを抱えたまま机へと歩み寄る。 「だったら……」 そして、机の上に無造作に放ってあった彫刻刀を手に取った。 「……迷わないような顔に、してあげる」 無表情だったお姉さんが、笑った。 ―― 4 ―― 「ゆ゛あ゛あ゛ああぁーーーーー!!! やべでねっ!!! や゛べでねっ!!!」 「駄目よ。これはあなたが“勘違い”しないようにするために、必要なことなのだから」 お姉さんの左手で、仰向けの状態で床に押し付けられるれいむ。 右手に握られた平刀タイプの彫刻刀は、その刃先をれいむの顔に向けている。 「ごべんなざいぃっ!!! ごべんな゛ざい゛ぃいいぃぃ!!! れいぶはブザイグでずぅっ!!! だがらゆるじでっ!!!」 「あなたがブサイクなのは知ってる。お姉さんはそれを、しっかり自覚して欲しいの」 そして、右手を振り下ろした。 ザクゥッ!!! れいむの左頬に、刃が抵抗なく突き刺さる。 その瞬間、叩かれた時の数十倍の激痛が、れいむの全身を襲った。 「ゆぎゃああぁあぁあぁぁぁぁぁあっ!!!! いだいぃぃいいぃっ!!!! い゛だいのやだぁあ゛あぁーーーー!!!! ゆっぐじじだいいいぃいいぃっ!!! ゆっぐじざぜでえぇええぇぇぇーーーーー!!!!」 「ほんのちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね。あなたのためなのよ、ブサイクれいむ」 外部からの異物が、体内の餡子に直接触れる。 それだけで、気を失いそうな痛みが身体を駆け抜ける。 しかしお姉さんは、彫刻刀を振り下ろす手を休めようとしない。 ザシュッ!!! 「ぴぎゃあ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁっ!!!!」 ドシュッ!!! 「い゛っびゃあ゛あぁあ゛あぁぁっ!?!?!」 グザッ!!! 「ひぎい゛い゛ぃいい゛ぃぃいいぃぃっ!!!!」 微笑を絶やさぬまま、お姉さんは繰り返し繰り返し、れいむの顔面に彫刻刀を突き刺す。 少しずつ刺す位置をずらしながら、目と口は避けて刺していく。 刺されたところは醜く腫れあがり、傷口からグズグズの餡子がはみ出している。 まるで、畑を耕しているかのようだ。 目と口以外の部分が、お姉さんの手によって均等に耕されていく。 「びぃ……ゆ……ぐ…じ……」 「もうすぐよ。もうすぐだから、我慢してね」 れいむの頭の中を、痛みと恐怖が支配する。 ぶくぶくと泡を吹きながら、振り下ろされる彫刻刀を目で追うことしか出来なかった。 “農耕作業”は10分足らずで終了した。 れいむは気を失い、白目を剥いたまま転がっている。 背中も底部も、美しく張りのある状態。黒髪の艶も保たれている。 だが、顔面は見るも無残。吐き気を催すほどグロテスクな有様……バケモノの顔だった。 漏れ出した粘性の強い餡子が、脆い岩石のように歪になって、れいむの顔を覆い尽くしている。 口は形を保っているが、動かすたびに周囲の皮に激痛が走るだろう。 浮き立った眼球がギョロリと動く様子は、一度目の当たりにすれば人間の子供でも逃げ出すに違いない。 お姉さんは、花柄のタオルで額の汗を拭った後、刷毛を使ってれいむの顔面に薄くオレンジジュースを塗る。 そして、れいむの目の前に座り込み、れいむが目を覚ますのをじっと待ち始めた。 れいむは、30分後に目を覚ました。 お姉さんが塗ったオレンジジュースのおかげか、ズタズタにされた顔面の痛みはもうなかった。 「おはよう、ブサイクれいむ」 「ゆ゛っ……ゆ、ゆっくりしていってね!」 怯えながら、れいむは挨拶を返す。 口の周囲に違和感を感じているようだが、発する言葉は明瞭だ。 「ごめんね。痛かったでしょう?」 「ゆ、ゆっくりぃっ!!! もういたいことしないでね!!!」 頭を撫でられながら、れいむは声を張り上げる。 まだ、自分の顔がどんな状態なのか、把握できていないようだ。 お姉さんはれいむを抱き上げると、壁際にある姿見の前へ移動した。 「ブサイクれいむ? もう痛いところはない?」 「ゆゆ!! だいじょうぶだよ!!」 そして、れいむを鏡と向かい合わせにする。 鏡には……歪な物体を抱きかかえた、やわらかい笑顔のお姉さんが映っている。 「そう、なら安心ね。………これならもう、“勘違い”しないでしょうし」 「……ゆゆっ?」 お姉さんの言葉に疑問を感じながら、れいむも鏡に目を向けた。 そこに映っていたのは、綺麗なお姉さんに抱きかかえられた……正視できないほど醜い、バケモノ。 鏡がどんなものなのか知っていたれいむは、そこで一旦思考が停止した。 「ゆーーーーー? ゆゆーーーーー?」 あれ? ここに映ってるのは何? れいむ? ちがう、れいむじゃないよね? だって、れいむはかわいいゆっくりだもん。綺麗なゆっくりだもん。 だから、こんな気持ち悪いのが、れいむなわけがないよ。 「おねえさん。このかがみさん、おかしいよ。れいむがうつってないよ」 「……ブサイクれいむ。瞬きして御覧なさい。口を大きく開けて御覧なさい」 優しく指示するお姉さん。 れいむは、それに従ってぱちぱちと瞬きをする。 すると、目の前のバケモノも瞬きをした。 「ゆゆ?」 何かの間違いだと思い、今度は口を大きく開けた。 バケモノも、グロテスクな皮膚を引き攣らせながら、口を開いた。 「ゆゆぅっ!!! れいむのまねをしないでね!!! れいむおこるよ!!!」 れいむが怒ると同時に、目の前のバケモノも歪んだ顔面を更に歪めた。 「ゆっ!? どうしてぇ!? おかしいよ!!! おかしいよぉっ!!!」 何をしても同じだった。れいむの行動を、バケモノは見事にコピーする。 だから、何の偶然でも有り得ないし、鏡がおかしいわけでもない。 れいむは、受け入れざるを得なかった。自分が、目の前のバケモノであるということを。 「ど……お…じ………で……?」 「これでもう、自分がかわいいれいむだなんて勘違いしないわよね? ブサイクれいむ?」 ニコッと笑むお姉さん。 がくがく震えるクリーチャー。 「あなた、いつも周りの人からかわいいって言われるから、自分が可愛いれいむだって勘違いしてたでしょう? だから忘れないようにしてあげたのよ? ブサイクれいむは誰よりもブサイクなんだ、って」 お姉さんは、れいむをしっかり掴んだまま放さない。 「そして、勘違いしてたでしょう。私より可愛いって。私より綺麗だって」 お姉さんは、笑っている。 「忘れないでね。あなたは“れいむ”じゃないのよ?」 お姉さんは、綺麗だ。 「自分の言葉で言って御覧なさい。あなたは、れいむじゃなくて何なの?」 れいむは、怖かった。 お姉さんが笑っているのに、怖かった。 逆らおうなんて発想は、これっぽっちもない。 ただただ従順に、お姉さんの言葉に従えばいい。 今まで心の中では逆らってきたが、それもここまでだった。 れいむの心は、音をたてて折れてしまった。 「れいむは………ブサイクれいむ……だよ…」 「…よくできました」 お姉さんは褒めてくれた。頭を撫でてくれた。 鏡に映るバケモノが、お姉さんの手の力でふにゃりと歪む。 いつもなら安らぎを得られる瞬間なのに、台無しだった。 れいむは、認めるしかなかった。 自分はかわいくない。自分はブサイクなのだ、と。 だって、本当にブサイクなのだから。それどころか、ブサイクを超越してしまったのだから。 たとえ心の中でも、かわいいれいむを自称する事なんて出来ない。 こんな醜い顔の、どこがかわいいというのか。 だから、れいむは諦めた。 “可愛いれいむ”をやめて、“ブサイクれいむ”になった。 「さぁ、お散歩に行きましょうか、ブサイクれいむ。公園で他の子と遊びましょうね」 れいむがお姉さんを見上げると、彼女は綺麗な微笑を浮かべた。 鏡越しに、れいむは微笑み返す。 だけど、自分の顔が笑っているように見えなくて、れいむは目に涙を浮かべた。 「ゆぅ……ゆっぐりいいぃぃ……」 「ふふふ、お友達に会えるのがそんなに嬉しいのね。 大丈夫よ、お友達はみんなゆっくりしてるから、ブサイクなあなたとも一緒にゆっくりしてくれるわ」 そんなわけがない。 こんな顔の自分を、皆は受け入れるわけがない。 しかし、お姉さんの手から逃れる術を、れいむは持っていなかった。 たとえ逃げる事が出来ても、れいむはどこでゆっくりすればいいのかわからない。 きっと、醜いれいむがゆっくり出来る場所など、お姉さんの家以外にないだろう。 「さぁ、行きましょうか」 足元のれいむを優しく抱えあげる。 お姉さんの顔は、綺麗な笑顔だった。 れいむよりもずっと綺麗な、あたたかい笑顔だった。 ―― あとがき ―― ご近所さんがペットばかり褒めるから、お姉さん嫉妬しちゃった♪っていうお話。 お姉さんキチガイだよ。キチガイだよお姉さん。 作:避妊ありすの人 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4517.html
「ブサイクれいむ」 ―― 1 ―― 8畳の洋室の隅にある、『れいむのおうち』と殴り書きされたダンボール。 ビニールボールやら新聞紙やら、遊び道具になりそうなものが放り込まれている。 その中に差し込む朝日を浴びて、れいむは目を覚ました。 「ゆゆ……ゆっくりしていってね!!」 巣にはれいむ以外誰もいない。何故なら、ここはれいむだけのおうちだから。 外からはチュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえる。鳥は、れいむよりもずっと早起きだ。 「ゆ! おなかがすいた! あさごはんをたべるよ!!」 ゆっくりは総じて燃費が悪い。 れいむのお腹は先程からぐ~ぐ~鳴りっぱなしだ。 ナメクジのように這いずって、れいむは巣から顔を覗かせる。 そこでは、飼い主であるお姉さんがテーブルで朝食をとっていた。 「あら? 今日は早いのね」 「ゆゆっ!!」 にっこり微笑むお姉さん。 それにつられて、れいむもキリッと眉毛を吊り上げて笑う。 だが、その笑顔は次の一言で崩れ去った。 「おはよう、ブサイクれいむ」 「ゆぅ……」 微笑を崩さないお姉さん。 その言葉を聞いた途端、れいむは悲しげな顔をして俯く。 「どうしたの? ブサイクれいむ? 朝の挨拶は?」 れいむの顔を覗きこみ、にこやかに問いかけるお姉さん。 ゆっくりできない。こんな挨拶はゆっくり出来ない。 それでもれいむは、お姉さんに逆らう事が出来ず…… 恐る恐るお姉さんを見上げながら、ぎこちない笑みで言葉を返した。 「ゆ……ゆ、ゆっくりしていってね!」 「はい、よく出来ました。さぁブサイクれいむ、朝ごはんにしましょう」 そんなれいむの顔を見て、お姉さんも満足げな笑顔を浮かべる。 とても幸せそうな、とても綺麗な、充足感に満ちた表情だ。 “ブサイクれいむ” れいむがこんな風に呼ばれたのは、今日が初めてではなかった。 ◆ れいむは、ペットショップで中レベル品質のゆっくりとして売られていた。 3ヶ月前に今の飼い主であるお姉さんに買われ、今はこうしてペットとして生活している。 そんなれいむは、生まれながらの美ゆっくりだった。 街を歩けば全てのゆっくりが振り返るぐらいの、美しいゆっくりだった。 れいむ自身も、自分の美貌に自信を持っていた。 そして、その美貌でお姉さんをゆっくりさせてあげたいとも思っていた。 飼われ始めた当初は、お姉さんもゆっくりしてくれた。 れいむはとても可愛いから、とてもゆっくりできる……そんな風に言ってくれた。 だが、いつからだろうか。お姉さんは変わった。 前触れもなく、こんなことを言うようになってしまったのだ。 『ねぇれいむ? どうしてあなたはそんなにブサイクなの?』 当然、最初は反論した。 『れいむはブサイクじゃないよ!! とてもゆっくりできる、かわいいれいむだよ!!!』 でも、半月ぐらいで反論する気力を失った。 自分がブサイクであることを否定するたびに、言葉で表すことが憚られるほどの虐待を受けたからだ。 『れいむはブサイクだから、私が捨てたら生きていけないわね。誰も飼ってくれないもの』 『私は優しいから、ブスなれいむでもちゃんと養ってあげるから、安心してね』 『あなたがこんなにブサイクなのだから、きっとあなたのお母さんはもっとブサイクなんでしょうね』 『ブサイクじゃない子と区別できるように、今日からあなたを“ブサイクれいむ”と呼ぶことにするわ』 いつからか、れいむは“ブサイクれいむ”と呼ばれるようになった。 お姉さんは、優しくてゆっくり出来る人だ。 ご飯は3食満足に食べさせてくれるし、時間が許す限り遊んでくれる。 歌が上手いと褒めてくれるし、夜一人で眠るのが怖いときは一緒に眠ってくれる。 お姉さんの手に撫でられると、れいむはとても安心できる。 そういう時、れいむはとてもゆっくりできるのだ。 だけど、たまにゆっくりできない時がある。 お姉さんが、れいむを“ブサイクれいむ”と呼ぶ時だ。 れいむはブサイクだ。れいむはブスだ。 こんな顔面崩壊ゆっくりは、野生じゃ誰もつがいになってくれないだろう。 だから、私のペットになれてよかったね。養ってもらえてよかったね。 でも子供は産ませないからね。こんなブサイクから生まれるなんて、子供が可哀相すぎるから。 れいむの心を、深く抉る言葉。 その言葉を、お姉さんはいつもと変わらぬ笑顔で、まるで褒め言葉のように放つ。 れいむの歌を褒めてくれるときと、れいむと一緒に眠ってくれるときと。 まったく同じ笑顔を浮かべて、お姉さんは繰り返しれいむの心を傷つけていくのだ。 ◆ 「むーしゃむーしゃ……」 お洒落な書体で『Reimu』と書かれた小さな器に、細かく砕いたお菓子が盛られている。 ゆっくりにとって最高のご馳走。野性の世界では、殆ど手に入れられない代物だ。 一口含んで噛み砕くたびに、れいむの口の中に例えようのない甘味が広がる。 だが、あの言葉が出てこない。 心を満たす幸福を更なる高みへ昇華させる、本能に刻み込まれた『しあわせ~!』が出てこない。 「どうしたのブサイクれいむ? 美味しくないの?」 お姉さんが、心配そうにれいむの顔を覗きこむ。 彼女の表情は、本当にペットを心配している飼い主のそれだ。 れいむを“ブサイクれいむ”と呼ぶことへの躊躇いや罪悪感は、まったくないのだろう。 「ゆ、ゆゆ……ゆっくりおいしいよ! とてもゆっくりできるあまあまさんだよ!!」 自分がかわいいゆっくりであるという意識が、言葉を詰まらせる。 決して反論してはいけない。思い出すのも躊躇われるぐらいの仕打ちを受けることになるからだ。 「そう、ならいいのだけど。たくさん食べて大きくなってね」 「ゆゆ!! ゆっくりりかいしたよ!!」 れいむにとってお姉さんは、すごくゆっくり出来る飼い主さんだ。 美味しいご飯をたくさん食べさせてくれるし、一緒に遊んでくれる。 れいむの歌を上手だと褒めてくれるし、一緒に歌の練習もしてくれる。 だけどここ数ヶ月で、れいむが心からゆっくりできたことは一度もない。 お姉さんの中で“かわいいれいむ”が“ブサイクれいむ”になってしまった、あの日から… 淡々と、繰り返しれいむの心を傷つけるあの言葉があるから、ゆっくりできるけどゆっくりできない。 あの言葉さえなければ、れいむは――― 「さ、お姉さんはお出かけしてくるから、ブサイクれいむはお留守番お願いね」 ―――もっとゆっくりできるのに。 ―― 2 ―― お姉さんは、昼頃に帰ると言い残して、外に出て行った。 きっと狩りに出かけたのだろう、とれいむは思った。 ゆっくりしているけど、ゆっくりできないお姉さん。 綺麗で優しいけれど、れいむを“ブサイク”というお姉さん。 お姉さんがいない間は、寂しいけれど心が落ち着く。 ゆっくりできないけれど、少しだけゆっくり出来る。 「れいむは……ブサイクじゃないよ」 誰もいないのに、誰かに訴えかけるように呟く。 お姉さんの言葉への反論が許されるのは、お姉さんがいないときだけだ。 「れいむは……かわいいんだよ…ブサイクなんかじゃないんだよぉ!!」 生まれてすぐ、れいむの顔を見たお母さんは『かわいいおちびちゃんだね!!』と言ってくれた。 ペットショップの店員さんも、こんな美れいむは今まで見た事がないと褒めてくれた。 お姉さんだって、最初は綺麗で可愛いと言ってくれたのに…… 「ゆっぐぅ……ゆっぐぃ……ゆっぐり゛い゛い゛ぃい゛い゛ぃい゛ぃぃぃぃ!!!!」 悔しくて、泣いた。 ゆっくりできるゆっくりだと。かわいいゆっくりだと、認めてもらえないのが悔しくて、泣いた。 そして、お姉さんがいない時にしか泣けないのが悔しくて、さらに泣いた。 お姉さんは、ゆっくりさせてくれる。だけど、認めてくれない。 美味しい食べ物をたくさんくれるし、一緒に歌ってくれるし、一緒に遊んでくれる。 だけど、れいむの可愛さだけは認めてくれない。ゆっくりとしたゆっくりだと、認めてくれない。 『こんなに美味しいご飯を毎日食べてるのに、ブスのままだなんて……とっても可哀相!』 『れいむはお歌が上手なのね。ブサイクなのに』 『あなたみたいなブサイクは誰も遊んでくれないでしょうから、お姉さんが遊んであげるね』 それだけで、れいむはゆっくりできなくなるのだ。 自分の誇る特徴を、それと認めてくれないだけで…… そろそろお姉さんが帰ってくるかなと、れいむが思い始めた頃。 こつんこつんと、ガラス戸を叩く音が聞こえた。 ボールを噛んだり蹴ったりしながら暇を潰していたれいむは、好奇心に誘われて音のしたほうへ跳ねていく。 カーテンの隙間から、顔を覗かせると…… 「ゆゆっ!! ゆっくりしていってね!!! まりさはまりさだよ!!」 そこには、野生のものと思われるゆっくりまりさがいた。 金髪と黒い帽子が特徴の、れいむと並んで最も数の多い種類である。 すごくゆっくりできそうなまりさだ。れいむはそう思った。 「ゆゆーー!! れいむはれいむだよ!! ゆっくりしていってね!!」 散歩の時以外で他のゆっくりに遭遇するのは、とても珍しいことだ。 ぴょんぴょん跳ねてアピールするまりさに、れいむは喜びながら同じポーズをとって応じた。 「ゆぅー!! れいむはとってもきれいだね!! ゆっくりできそうなれいむだね!!」 「ゆゆっ!? ゆふふ!! てれるからゆっくりほめないでね!!」 頬を赤く染めながらも、れいむの心は幸福で満たされていた。 こんな風に、周囲のゆっくりはいつもれいむのことをかわいいと褒めてくれる。 散歩の途中で人間さんに会ったときも、同じように褒めながら頭を撫でてくれる。 れいむの事をブサイクだというのは、お姉さんだけなのだ。 「ゆぅ……かべさんがいじわるしてるよ!! れいむといっしょにゆっくりしたいのにぃ!!」 まりさは頬を膨らませながら、どんどんとガラス戸に体当たりしている。 どうしよう、このままではガラス戸が壊されて……お姉さんが困ってしまうかもしれない。 そう思ったれいむは、まりさを止めることにした。 「ゆっくりやめてね!! かべさんをこわしたら、おねえさんがこまるよ!!!」 「ゆゆぅ? おねえさん? それってゆっくりできるもの?」 「おねえさんはゆっくりできるひとだよ!! だからかべさんをこわさないでね!!」 「ゆん!! ゆっくりりかいしたよ!! かべさんをこわさないで、ゆっくりするね!!」 それから2匹は、ガラス越しに頬を合わせながらゆっくりすることにした。 本当のすりすりに比べればゆっくりできないけど、これでも十分ゆっくりできる。 好きな食べ物とか、好きな遊びとか、好きな歌とか、いろんなことについて話しながらゆっくりした。 そして、20分ぐらい経って… 「ねぇ、れいむ?」 「ゆ? なぁに?」 「まりさは、れいむとずっとゆっくりしたいよ!!」 それは、ゆっくりにとっての愛の告白だった。 出会って20分程度しか経過していないが、それはゆっくりにとって愛情を確信するのに十分な時間だった。 もじもじしながら俯いているまりさを見て、れいむは考え始める。 まりさはとてもゆっくりしている。れいむをかわいいと褒めてくれる。 だから、れいむもまりさとずっとゆっくりしたい。 だけどお姉さんは……そのことを許してくれるだろうか? まりさと一緒に暮らすことを、お姉さんは認めてくれるだろうか? そうだ、お願いしてみよう。 こんなにゆっくりしたまりさだから、ちゃんとお願いすれば許してくれるに違いない。 「ゆゆ!! れいむもまりさとゆっくりしたいよ!!」 「ゆぅー!!! ありがとう!! ゆっくりしていってね!!」 れいむは、まりさの告白を受け入れた。 だが、一緒に暮らすのはお姉さんの許しを得てからだ。 「ゆっくりまってね!! おねえさんにおねがいしてみるからね!! ゆっくりするのはそれからだよ!!」 「ゆっくりりかいしたよ!!………ゆっ?」 告白を受け入れてくれただけでも嬉しい。 全身を駆け巡る幸福に身を弾ませていたまりさは………れいむの背後に現れた大きな影に気づいた。 その影は、自らの手でカーテンを退かし、鮮明な姿を現した。 “影の正体”は足元のれいむに目をやると、視界の端に入り込んだ黒い物体―――まりさに視線を移した。 「ブサイクれいむ? こんなところで何をしているの?……って、あらら、野良ゆっくりが泥棒に来たのね」 「ゆっ!? おねえさん!? おかえりなさい!」 れいむに微笑みかけたお姉さんは、まりさに目を向けても表情を変えなかった。 驚きの声を上げながら、れいむはお姉さんの顔を見上げる。 「ゆゆぅ!! このひとがおねえさんなの? ゆっくりー!!」 生まれつきのふてぶてしい笑みを浮かべて、まりさはぴょんぴょん跳ねた。 れいむの言ってたとおり、このお姉さんはとてもゆっくりできそうだ。 そう思って、喜びのあまりドンドンとガラス戸に体当たりする。 「まったく、うるさいわね。これだから野良は……」 「ゆっくりぃ!! おねえさん!! れいむはおねがいがあるよ!!」 「ちょっと後にしてくれる? お姉さんはこのまりさとお話があるから、ブサイクれいむは向こうのお部屋で待っててね」 そう言うと、お姉さんはガラス戸を開けてサンダルを履き、庭へと出て行った。 分厚いカーテンを閉め、戸もぴしゃりと閉められてしまって、れいむからは外の様子を見る事が出来ない。 でも、きっとまりさのほうからお話をしてくれて、お姉さんも同居を許してくれるだろう。 れいむはそんな風に、楽観的に考えていた。 だが、その外では“お話”など行われていなかった。 「ささ、泥棒さんは出てってちょうだい。二度と戻ってきちゃ駄目よ」 「ゆゆ!? やめてね!! おはなしをきいて――― 問答無用でまりさを鷲づかみにし、そのまま塀の向こう側へ放り投げる。 事が片付いたと安心しきったお姉さんは、微笑を浮かべたまま家の中へ戻ろうとしたが…… 「ゆっくりまってね!! おはなしをきいてね!!」 まりさは、塀の下部に空いている小さな穴から、ひょっこりと顔を覗かせた。 そのままずりずりと這いずり、再び庭の中へ入り込む。 「まりさはれいむとずっとゆっくりしたいよ!! おねがいだよ!!」 ぴょんぴょん跳びはねながら、まりさは甲高い大声を放つ。 それに反応して振り向いたお姉さんの顔は、笑っていなかった。 まるでお面を被っているかのように、ピクリとも動かない……感情の篭っていない顔。 「もう二度と言わないからよく聞きなさい。“5秒以内”に、私の家から出てって」 「ゆっ!? どうしてそんなこというの!?」 会話など成り立っていなかった。 通常と違うのは、その原因がゆっくりではなく、人間である“お姉さん”だということ。 彼女は一切の無駄を許さず、自分の意思に従って着々と行動している。 「5……4……」 「おねがいだよ!! れいむもまりさとゆっくりしたいっていってたよ!!」 お姉さんは、まりさの言葉に耳を傾けようとはしない。 彼女にとって、まりさは最初から“排除するべき野良ゆっくり”なのだ。 「3……2……」 「ゆっくりきいてよ!! れいむはとてもかわいいゆっくりだったよ!! そんなかわいいれいむと、まりさはすごくゆっくりしたい!! ゆっくりしたいんだよおおおおおぉぉ!!!」 声を張り上げるまりさ。 お姉さんは、それとは無関係に背後を振り返る。 「1……」 そして、ガラス戸もカーテンも完全に閉められていることを確認すると――― 「……ゼロ」 拳を大きく振り上げた。 ―― 3 ―― 言いつけどおり、隣の部屋でゆっくり待っていたれいむだったが… お姉さんとまりさのお話がどうしても気になるので、庭に面した部屋に戻ってきてしまった。 盗み聞きは良くないことだとわかっているが、今回ばかりは我慢できないのだ。 「ゆっ! そろーりそろーり……」 カーテンは光を殆ど遮断してしまうので、2人の姿はよく見えない。 れいむはゆっくりとカーテンに近づき、聴覚を研ぎ澄ます。 その瞬間…… ゴッ!! ゴッ!! ゴスッ!!! 鈍い音が、3回連続した。 「どぼ**********!!! がぼ**~~~****~~~~!!!!」 誰かが庭で物凄い大声で叫んでいる。 だが、ガラスとカーテンを隔てたれいむには聞き取れない。 ドンッ!! ドンッ!! ドスンッ!!! 何かでやわらかい物を殴るような、そんな音だ。 「ごっ****~~~~!!!! ゆっぐり*********!!!!」 「ゆゆぅ? なんだかゆっくりできないよ!?」 鈍感なれいむも、不穏な雰囲気を感じ取った。 カーテンの向こう側で、誰かがゆっくり出来なくなっている気がする。 だけど、怖くてカーテンの向こう側を覗く事が出来ない。 「こわいよ!! ごあい゛よ!! ゆ゛っくり゛させて!! お゛ね゛え゛さああ゛ぁぁぁん!!!」 そのお姉さんは、カーテンの向こう側だ。 もしかしたらお姉さんも、何者かの手によってゆっくり出来なくされるかもしれない。 そう思ったれいむは、怖くて怖くてたまらなくなり、その場で震えていることしか出来なくなった。 ゴスンッ!! ドスンッ!!! バキィッ!!! 「****~~~~!!! ** **~~~!!」 ガッ!!! ドッ!!! ゴッ!!! 「* *** * 」 バコッ!!! ゴスッ!!! ズドンッ!!! 「** * 」 音は鳴り止まない。 だが、叫び声はだんだん弱くなっていって…… ズドッ!!! ゴスッ!!!! 「 」 ……そして、聞こえなくなった。 「ゆゆゆゆぐぐぐぐぐぐぐりりりりりりりりいぃいいぃぃぃぃい?????」 もしかして、まりさもお姉さんもゆっくりできなくなってしまった? 頭に浮かんだ最悪の光景に恐怖して、れいむはまともに喋ることもできない。 歯茎をむき出しにしたまま、驚愕の表情でガクガクと震えている。 そんなれいむの目の前に…… ガラガラガラガラ 「あら、いつも以上にブサイクな顔をしてどうしたの?」 ガラス戸を開けて姿を現したのは、お姉さんだった。 全身を見渡しても傷一つなく、その綺麗な顔はいつもと同じように微笑んでいる。 手についた黒い何かをパッパッと払いながら、涙でくしゃくしゃになったれいむの顔を見下ろした。 「おねえええざああぁああぁっぁあん!!! ごあがっだよおおおおおぉぉおぉぉ!!!」 れいむは勢いよく、お姉さんの胸に飛び込んだ。 そんなれいむを、優しく抱きしめてくれるお姉さん。 れいむをブサイクだというけれど、やっぱりお姉さんは優しくてゆっくりできる。 「もしかして、怖がらせちゃった? 大丈夫よ、あんなのお姉さんが追い払ったから」 「ゆやああぁあぁあぁあぁっぁああん!!!!…………ゆっ? いまなんていったの?」 「“あんなのお姉さんが追い払った”って言ったのよ? あのまりさ、泥棒に来た悪いゆっくりだったから」 「ゆゆっ!?!?」 れいむは理解できなかった。 あのまりさは、あんなにゆっくりしていたのに。そのまりさが、泥棒? 「どうしたのブサイクれいむ? お姉さん、何か変なこと言った?」 「ま、まりさはどろぼうさんじゃないよ!! とてもゆっくりできるまりさだよっ!!!」 あのまりさはとてもゆっくりしていた。泥棒なんかじゃない。 なのに、泥棒と間違えて追い払ってしまうなんて……! 「まりさをゆっくりつれてきてね!! まりさはわるくないよ!! いいものだよ!!!」 「はいはい、もうおうちに戻りましょうね」 れいむの心からの叫びを、お姉さんはまともに聞こうとしない。 力任せに、れいむを巣に押し戻そうとする。 でも、れいむは諦めなかった。力いっぱい、お姉さんの手を押し返す。 「ゆっくりはなしをきいてね!! だって――― その時、れいむはお姉さんの背後に転がっている黒い帽子に気づいた。 白いリボンがアクセントの、高く尖った黒い帽子。 あれ? あの帽子……つい最近、どこかで見た気がする。 「ゆゆぅっ!!!」 れいむはお姉さんの手から離れ、庭の真ん中に落ちている帽子へと駆け寄る。 舐め回すようにその帽子を眺めながら、必死になって記憶を辿っていく。 そして、思い出した。つい数分前の、ゆっくりとした光景が思い浮かんだ。 「これはまりさのぼうしだよ!!! どうしてここにおちてるの!?」 お姉さんはため息をつくと、苦笑いしながら答えた。 「まりさが泥棒だからよ」 「ちがうっていってるでしょ!? まりさはどろぼうさんじゃないよ!!!」 「じゃぁ、どうしてその帽子が落ちたままなの? どうしてまりさは、取りに戻ってこないのかしら?」 にこりと笑って、首を傾げるお姉さん。 れいむは思考がついていかず、言葉を失ってしまった。 「きっと、ここに戻ってこれない理由があるのね。じゃぁ、その理由は何かしら?」 「ゆゆぅ………そ、それは……」 「まりさは帽子を失くしても逃げなければいけなかった。 何故ならまりさは泥棒で、悪いゆっくりだから……見つかったら捕まってしまうから。だから逃げたの」 れいむは、反論できなかった。反論する頭などもとからない。 俯くれいむを見て、お姉さんは満足そうな顔をする。 「ほら、いつだってお姉さんは正しいのよ? 今まで私が間違ってたことって、ある?」 「ゆっ………」 れいむを抱え上げて、お姉さんは家の中へ上がる。 お姉さんの胸の中。れいむの一番安心できる場所だ。 だけど、今はそんな気分じゃなかった。 大好きなまりさが、悪者呼ばわりされているから…… 「ねぇ、ブサイクれいむ? 冷静に考えてみて。あなたはあのまりさを良いゆっくりだと言ってるけど…… あなたを“かわいいれいむ”だなんて言うお馬鹿さんが、良いゆっくりなわけないでしょう?」 「ゆゆっ!? そんなことないよぉっ!!!」 今までで一番の、力強い否定。 これ以上、まりさを悪者呼ばわりされるのは我慢できなかった。 れいむをかわいいと言ってくれた、ゆっくり出来るれいむだと褒めてくれた。 そんなまりさを、これ以上ゆっくり出来ないモノにされたくなかったから。 だが、勢いに任せて放った言葉は、決していい結果を導かない。 パァアン!!! 「ゆびぃっ!?!?!」 何かが破裂するような音。 直後、れいむの左頬が真っ赤に染まる。 「言いなさい。何が“そんなことない”のかしら?」 お姉さんの顔は、笑っていなかった。 それを見上げると同時に、先程叩かれた時の痛みが餡子を伝って全身に広がっていく。 ビクビクと身体を震わせて、だらだら涙を流している。 「ゆ゛!? い゛だいっ!! い゛だい゛よ゛ぉーー!!! ゆ゛ゆ゛ぅーーー!!!」 「お姉さん、何か間違ったこと言った?」 パアァンッ!!!! 今度は右頬が叩かれた。 両頬を真っ赤に腫らしたれいむに、お姉さんは鼻先が当たるくらいに顔を近づける。 そして、れいむのまん丸な目を凝視し、無表情のまま問いかけた。 「ゆびぃっ!! ゆびぃーーーっ!!! ゆ゛あ゛ぁーーー!!」 「言って御覧なさい? 何が違うのかしら? まりさが悪いゆっくりだってこと? それとも、あなたが“ブサイクれいむ”だってこと? どっちなの?」 れいむは答える事が出来なかった。 お姉さんが、笑っていなかったから。 笑っていないときのお姉さんは、とても怖いから。 どっちが正解なのだろう? いったいどちらを選んだら、お姉さんは痛いのをやめて、優しいお姉さんに戻ってくれるのだろう? 「ふーん、迷ってるのね」 「ゆぅうぅぅ……」 お姉さんから視線を逸らし、小さく唸るれいむ。 そんなれいむを見て困ったようなため息をついたお姉さんは、れいむを抱えたまま机へと歩み寄る。 「だったら……」 そして、机の上に無造作に放ってあった彫刻刀を手に取った。 「……迷わないような顔に、してあげる」 無表情だったお姉さんが、笑った。 ―― 4 ―― 「ゆ゛あ゛あ゛ああぁーーーーー!!! やべでねっ!!! や゛べでねっ!!!」 「駄目よ。これはあなたが“勘違い”しないようにするために、必要なことなのだから」 お姉さんの左手で、仰向けの状態で床に押し付けられるれいむ。 右手に握られた平刀タイプの彫刻刀は、その刃先をれいむの顔に向けている。 「ごべんなざいぃっ!!! ごべんな゛ざい゛ぃいいぃぃ!!! れいぶはブザイグでずぅっ!!! だがらゆるじでっ!!!」 「あなたがブサイクなのは知ってる。お姉さんはそれを、しっかり自覚して欲しいの」 そして、右手を振り下ろした。 ザクゥッ!!! れいむの左頬に、刃が抵抗なく突き刺さる。 その瞬間、叩かれた時の数十倍の激痛が、れいむの全身を襲った。 「ゆぎゃああぁあぁあぁぁぁぁぁあっ!!!! いだいぃぃいいぃっ!!!! い゛だいのやだぁあ゛あぁーーーー!!!! ゆっぐじじだいいいぃいいぃっ!!! ゆっぐじざぜでえぇええぇぇぇーーーーー!!!!」 「ほんのちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね。あなたのためなのよ、ブサイクれいむ」 外部からの異物が、体内の餡子に直接触れる。 それだけで、気を失いそうな痛みが身体を駆け抜ける。 しかしお姉さんは、彫刻刀を振り下ろす手を休めようとしない。 ザシュッ!!! 「ぴぎゃあ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁっ!!!!」 ドシュッ!!! 「い゛っびゃあ゛あぁあ゛あぁぁっ!?!?!」 グザッ!!! 「ひぎい゛い゛ぃいい゛ぃぃいいぃぃっ!!!!」 微笑を絶やさぬまま、お姉さんは繰り返し繰り返し、れいむの顔面に彫刻刀を突き刺す。 少しずつ刺す位置をずらしながら、目と口は避けて刺していく。 刺されたところは醜く腫れあがり、傷口からグズグズの餡子がはみ出している。 まるで、畑を耕しているかのようだ。 目と口以外の部分が、お姉さんの手によって均等に耕されていく。 「びぃ……ゆ……ぐ…じ……」 「もうすぐよ。もうすぐだから、我慢してね」 れいむの頭の中を、痛みと恐怖が支配する。 ぶくぶくと泡を吹きながら、振り下ろされる彫刻刀を目で追うことしか出来なかった。 “農耕作業”は10分足らずで終了した。 れいむは気を失い、白目を剥いたまま転がっている。 背中も底部も、美しく張りのある状態。黒髪の艶も保たれている。 だが、顔面は見るも無残。吐き気を催すほどグロテスクな有様……バケモノの顔だった。 漏れ出した粘性の強い餡子が、脆い岩石のように歪になって、れいむの顔を覆い尽くしている。 口は形を保っているが、動かすたびに周囲の皮に激痛が走るだろう。 浮き立った眼球がギョロリと動く様子は、一度目の当たりにすれば人間の子供でも逃げ出すに違いない。 お姉さんは、花柄のタオルで額の汗を拭った後、刷毛を使ってれいむの顔面に薄くオレンジジュースを塗る。 そして、れいむの目の前に座り込み、れいむが目を覚ますのをじっと待ち始めた。 れいむは、30分後に目を覚ました。 お姉さんが塗ったオレンジジュースのおかげか、ズタズタにされた顔面の痛みはもうなかった。 「おはよう、ブサイクれいむ」 「ゆ゛っ……ゆ、ゆっくりしていってね!」 怯えながら、れいむは挨拶を返す。 口の周囲に違和感を感じているようだが、発する言葉は明瞭だ。 「ごめんね。痛かったでしょう?」 「ゆ、ゆっくりぃっ!!! もういたいことしないでね!!!」 頭を撫でられながら、れいむは声を張り上げる。 まだ、自分の顔がどんな状態なのか、把握できていないようだ。 お姉さんはれいむを抱き上げると、壁際にある姿見の前へ移動した。 「ブサイクれいむ? もう痛いところはない?」 「ゆゆ!! だいじょうぶだよ!!」 そして、れいむを鏡と向かい合わせにする。 鏡には……歪な物体を抱きかかえた、やわらかい笑顔のお姉さんが映っている。 「そう、なら安心ね。………これならもう、“勘違い”しないでしょうし」 「……ゆゆっ?」 お姉さんの言葉に疑問を感じながら、れいむも鏡に目を向けた。 そこに映っていたのは、綺麗なお姉さんに抱きかかえられた……正視できないほど醜い、バケモノ。 鏡がどんなものなのか知っていたれいむは、そこで一旦思考が停止した。 「ゆーーーーー? ゆゆーーーーー?」 あれ? ここに映ってるのは何? れいむ? ちがう、れいむじゃないよね? だって、れいむはかわいいゆっくりだもん。綺麗なゆっくりだもん。 だから、こんな気持ち悪いのが、れいむなわけがないよ。 「おねえさん。このかがみさん、おかしいよ。れいむがうつってないよ」 「……ブサイクれいむ。瞬きして御覧なさい。口を大きく開けて御覧なさい」 優しく指示するお姉さん。 れいむは、それに従ってぱちぱちと瞬きをする。 すると、目の前のバケモノも瞬きをした。 「ゆゆ?」 何かの間違いだと思い、今度は口を大きく開けた。 バケモノも、グロテスクな皮膚を引き攣らせながら、口を開いた。 「ゆゆぅっ!!! れいむのまねをしないでね!!! れいむおこるよ!!!」 れいむが怒ると同時に、目の前のバケモノも歪んだ顔面を更に歪めた。 「ゆっ!? どうしてぇ!? おかしいよ!!! おかしいよぉっ!!!」 何をしても同じだった。れいむの行動を、バケモノは見事にコピーする。 だから、何の偶然でも有り得ないし、鏡がおかしいわけでもない。 れいむは、受け入れざるを得なかった。自分が、目の前のバケモノであるということを。 「ど……お…じ………で……?」 「これでもう、自分がかわいいれいむだなんて勘違いしないわよね? ブサイクれいむ?」 ニコッと笑むお姉さん。 がくがく震えるクリーチャー。 「あなた、いつも周りの人からかわいいって言われるから、自分が可愛いれいむだって勘違いしてたでしょう? だから忘れないようにしてあげたのよ? ブサイクれいむは誰よりもブサイクなんだ、って」 お姉さんは、れいむをしっかり掴んだまま放さない。 「そして、勘違いしてたでしょう。私より可愛いって。私より綺麗だって」 お姉さんは、笑っている。 「忘れないでね。あなたは“れいむ”じゃないのよ?」 お姉さんは、綺麗だ。 「自分の言葉で言って御覧なさい。あなたは、れいむじゃなくて何なの?」 れいむは、怖かった。 お姉さんが笑っているのに、怖かった。 逆らおうなんて発想は、これっぽっちもない。 ただただ従順に、お姉さんの言葉に従えばいい。 今まで心の中では逆らってきたが、それもここまでだった。 れいむの心は、音をたてて折れてしまった。 「れいむは………ブサイクれいむ……だよ…」 「…よくできました」 お姉さんは褒めてくれた。頭を撫でてくれた。 鏡に映るバケモノが、お姉さんの手の力でふにゃりと歪む。 いつもなら安らぎを得られる瞬間なのに、台無しだった。 れいむは、認めるしかなかった。 自分はかわいくない。自分はブサイクなのだ、と。 だって、本当にブサイクなのだから。それどころか、ブサイクを超越してしまったのだから。 たとえ心の中でも、かわいいれいむを自称する事なんて出来ない。 こんな醜い顔の、どこがかわいいというのか。 だから、れいむは諦めた。 “可愛いれいむ”をやめて、“ブサイクれいむ”になった。 「さぁ、お散歩に行きましょうか、ブサイクれいむ。公園で他の子と遊びましょうね」 れいむがお姉さんを見上げると、彼女は綺麗な微笑を浮かべた。 鏡越しに、れいむは微笑み返す。 だけど、自分の顔が笑っているように見えなくて、れいむは目に涙を浮かべた。 「ゆぅ……ゆっぐりいいぃぃ……」 「ふふふ、お友達に会えるのがそんなに嬉しいのね。 大丈夫よ、お友達はみんなゆっくりしてるから、ブサイクなあなたとも一緒にゆっくりしてくれるわ」 そんなわけがない。 こんな顔の自分を、皆は受け入れるわけがない。 しかし、お姉さんの手から逃れる術を、れいむは持っていなかった。 たとえ逃げる事が出来ても、れいむはどこでゆっくりすればいいのかわからない。 きっと、醜いれいむがゆっくり出来る場所など、お姉さんの家以外にないだろう。 「さぁ、行きましょうか」 足元のれいむを優しく抱えあげる。 お姉さんの顔は、綺麗な笑顔だった。 れいむよりもずっと綺麗な、あたたかい笑顔だった。 ―― あとがき ―― ご近所さんがペットばかり褒めるから、お姉さん嫉妬しちゃった♪っていうお話。 お姉さんキチガイだよ。キチガイだよお姉さん。 作:避妊ありすの人 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/643.html
ゆ虐黙示録れいむ 1話 「はぁー今日も疲れたよ…」 ゆっくり用のスィーバスから降り自宅のアパートの道すがられいむの足取りは重い ゆっくりが高齢化社会解決の労働力として社会に参入して数年、社会に適応できたゆっくり の生活レベルは飛躍的に上昇した。 多くの野良、又は野生のゆっくりがうわさを聞きつけゆっくりを得るべく社会に進出し 胴付きゆっくり達はウエイトレスやレジ係といった比較的賃金効率の良い仕事に就く一方で 特に取りえのない者は、重労働や、危険な仕事に就くことが多い。 このれいむの仕事も自動車工場の期間工という過酷な物だ、次から次に運ばれるて来る自動車の ボディを塗装前にきれいにする為必死に拭き上げる、埃は塗装の大敵なので工場は密閉、空気 の流れが起きないように空調も止められ大型機械の排熱で作業中はまるで灼熱地獄だ。 「あぁ明日も仕事なんだ」 1畳間ながらも雨風は十分防げるアパート、人間の1/10の給料ながら毎日飯にはありつける がんばって節制すれば安い家電製品位は買えるだろう。 しかし、生活が豊かになるに反比例してれいむはゆっくりできなくなっていった。 毎日起きるたび振り出しに戻されるような虚無感、もうずっとゆっくりなんてしていない気がする、 そんな事を考えアパートの前に着いたところで異変に気が付いた、アパートがないのだ あるのは焼けた木材だけ。 「なん…なのこれ…なんなのこれぇーー!!」 火事である、ガレキの前で放心状態の他の住人のゆっくりを問い詰めると放火であることが分かった 「そんなぁ、燃えちゃったのぇ…れいむのお布団さんやラジオさん…あまあまも?」 すべてを失ったのだ、今まで積み上げた物全て泣くに泣けないとはまさにこの事。 「おや?そこにいるのはれいむじゃないのぜ?」 真っ白になっているれいむの背後から声がかけられた。 「ゆゆっ?その声はまりさなの?」 声の主はゆっくり学校時代の旧友まりさである、おちこぼれという共通点がきっかけで親友と言える ほど親交を深めた二人ではあったが落ちこぼれ故、卒業後れいむは多忙を極めまりさと疎遠になっていた。 まりさもきっと自分と同じような境遇であろうとれいむは思っていたが現実は違ったようだ。 「おいおい、久しぶりにあった親友が分からないのかぜ?そりゃないんだぜー」 れいむが一見して分からないのも無理はない、まりさが声をかけたのは高級スィーの窓からだ、その 服装は全身ブランドで固められおちこぼれの学校時代のおもかげはない。 「ばりざぁ…れいむ…はばりじゃぁぁ」 「どうしたんだぜ!れいむ何があったんだぜ!!」 昔の親友のまりさ、その姿がれいむには地獄に舞い降りた仏にみえた。 「火事にあったのぜぇ…それは災難なんだぜ…そうだれいむ今日はまりさの家に泊まるといいのぜ」 「ええっ!いいのぉ?いや…でもそこまで頼れないよぉ…」 「何いってるんだぜ!親友のピンチ、助けてこそのゆっくりなんだぜ!」 そういうが早いか戸惑うれいむを自分の高級すぃーに押し込みまりさは走り出す、到着したのは高級マンション であった 「ゆわーまりさすごい所に住んでるんだね、れいむびっくりだよ!」 「たいしたことないんだぜ、ささ入るんだぜお腹もすいてるだろうしまりさはあまあまを用意するんだぜ」 まりさはれいむを部屋に通すと次々にれいむの観たことないような食事を持ってくる 「さあ!遠慮しないでむーしゃむーしゃするんだぜ!」 「ありがとうまりさ、うめっこれめっちゃうめっ!!」 安心したことにより思い出したように空腹を感じていたれいむはガツガツと食事を掻きこんで行く 「慌てなくてもまだいっぱいあるんだぜ」 「ばりざぁありがとう、れいむこの恩は必ずかえすねぇ」グラァ 涙を流しながらまりさの友情に感謝した所でれいむの記憶は途絶えた 「ああ・・・すぐにその恩かえしてもらうんだぜえ、利子付きでねぇ」
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/514.html
「ゆぅ………ここはどこなの?………」 薄暗い部屋でれいむは目を覚ました。 「ゆゆ!まりさ!まりさ!さっさとめをさましてね!ここはなんだか、ゆっくりできないきがするよ!」 「ゆぅ…なんなんだぜ?…ゆゆ?!ここはどこなんだぜ?」 れいむは隣にまりさが居る事に気がついた。 れいむの呼びかけにより、まりさが目を覚ます。 「ゆ!おちびちゃんはどこなんだぜ?!おちびちゃーん!いるならへんじをするんだぜ!」 まりさは薄暗い部屋を見渡し、自分の子供達に呼びかける。 そう、このまりさには3匹の子ゆっくりが居た。 れいむ種二匹にまりさ種1匹。 だが、部屋を見渡しても何処にも姿は見えなかった。 「ゆぅ…れいむ、おちびちゃんたちをさがすんだぜ!」 「どうしてそんなこと、しなくちゃならないの?れいむはおなかがすいているんだよ!まりさが、がんばってさがしてね!」 「そんなこと、いってるばあいじゃないんだぜ!いっしょにおちびちゃんたちを、さがすんだぜ!」 「ゆぅ…わかったよ!だけどついでに、たべものもさがすよ!」 まりさの説得でようやく重い腰(?)をあげるれいむ。 もっとも、れいむにとっては子供たちは二の次であるが、二匹は自分達の子供を捜すことにした。 だが、それもすぐに終わった。 「ゆんぶぅ?!」 「ゆげべぇ!」 二匹は少し飛び跳ねた所で、透明な壁に思いっきりキスをした。 「ゆぅ…なんなんだぜ、このかべさんは?!」 「いだいぃぃぃ!れいむのきれいなおかおがぁぁぁぁ!」 部屋が薄暗くて気がつかなかった様だが、この二匹は透明な箱に入れられていた。 まりさは壁に必死で体当たりをするが、当然そんなものではビクともしない。 そんなまりさとは対照的に、れいむはしきりに痛がっていた。 「何か五月蝿いと思ったら、やっとお目覚めか…」 部屋の一角から急に差し込む光に、思わず目を細める二匹。 そこには一人の男が立っていた。 「ゆゆ!なにかとおもえば、くそじじいなんだぜ!やい、くそじじい!ここはどこなんだぜ! おちびちゃんはどこなんだぜ!それから、あまあまをよういするんだぜ!」 「れいむはおなかがすいているんだよ!さっさとあまあまをよういしてね!たくさんでいいよ! それから、おちびちゃんをかえしてね!」 二匹は部屋に入ってきた男に向かって罵声を浴びせる。 男はそんな二匹を眺めながら、笑顔で話しかけてきた。 「ははは、流石に元気がいいね。まあ、それくらいじゃないと面白くないけど… それより、君達に聴きたい事があるんだけど………」 「そんなことは、どうでもいいんだぜ!さっさとこっちのようきゅうに、こたえるんだぜ!」 「あたまのかわいそうなじじいだね!れいむのいってることがわからないの?ばかなの?しぬの?」 男に向かってさらに罵声を浴びせる二匹。 だが男は一切表情を変えることなく、自分のペースで二匹に語りかける。 「これに見覚えはあるかい?」 男はそう言うと、二匹の目の前に二本の木の枝をちらつかせる。 「ゆん?ただのきのえだなんだぜ!それがどうかしたんだせ?」 「そんなことはどうでもいいよ!さっさとあまあまをもってきてね!れいむはおなかがぺこぺこだよ!」 男は表情を変えずに、二匹の頭に持っていた木の枝を突き刺した。 「ゆぎゃん!いだいんだぜぇぇぇぇ!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!いだいぃぃぃぃぃ!!」 「どうだい?少しは思い出してきたかい?この枝について」 枝を頭に生やしながら、泣き叫ぶ二匹。 男はそんな様子を見て、再度問いかける。 「やっぱり分からないのかい?この枝で僕のさなえを傷つけた事も思い出さないのかい?」 少し悲しそうな目をして二匹に問いかける男。 二匹はそんな様子に気がつく事もなく、ただ痛がっているだけだった。 「どぼじでごんなごどするんだぜぇぇぇぇぇ?!」 「ゆるさないよぉぉぉ!このくそじじいぃぃぃぃ!!」 「許して貰わなくてもいいよ、僕も君達を許す気はないしね…」 そう言うと男は二匹に刺さった枝を抜き取ると、 目の前に円筒状の透明なプラスチックの容器を2つ用意した。 「おそらをとん…なにするんだぜぇぇぇ!はなせ!このくそじじぃぃぃぃ!!」 男はまりさを持ち上げると、プラスチックの容器の中にまりさを収めていく。 容器はまりさに丁度良い位のサイズで、殆ど隙間なくぴったりと収まった。 若干高さには余裕があるものの、それでも容器の半分ほどは体で埋まっており、 トレードマークの黒い帽子の先だけが、容器の外に顔を出していた。 「ゆぐむぅ?!せまいんだぜぇぇぇ!はやくここからだすんだぜぇぇぇ!!」 必死に叫び体を動かそうとするまりさであったが、 プラスチックの壁が体に密着して、思うように動けないでいた。 男は同じようにれいむも容器の中に納めていった。 「ゆぎゅぅぅぅぅ?!せまいぃぃぃ!くるじぃぃぃぃぃ!!はやくここからだぜぇぇぇぇぇ! それとあまあまもよこせぇぇぇぇ!!」 れいむは、まりさよりも若干大きく、というか太っていたので、容器の幅が狭く感じるらしい。 実際に2/3ほどの高さまでに、その体が収まっている所をみると、やはりまりさよりは体格が良いらしい。 男は二匹が収まりきると、容器にプラスチックの蓋をした。 この蓋は少々特殊な形をしていた。 円上の蓋の中央に太いネジのような物が飛び出しており、その天頂部はコックの様な形をしていた。 そう、この容器は重しいらずの漬物器だったのだ。 蓋をしっかり閉めた事を確認した男は、まりさの入った容器の蓋のコック部分を回していった。 蓋についた太目のネジに連動して、蓋の内側から圧し蓋がまりさに迫っていく。 「ゆっぐぅ?!なんなんだぜこれはぁぁぁぁ?!あたまがおもいんだぜぇぇぇぇ!! ゆっがぁぁぁ?!どうなっているんだぜ!!」 頭上の異変に気がついたまりさは、頭上の方に目をやると叫びだす。 帽子は圧し蓋に押しつぶされて、まりさを圧迫し始めた所で準備は完了した。 続いてれいむにも同じ処置をする。 れいむは、まりさよりも高さがあったため、さほどコックを回さずとも頭上に圧し蓋が達した。 「ゆんぎゅぅぅぅぅぅ?!なんだかあたまのほうがくるしいよ!はやくこれをどかしてね!」 「そんな事よりこっちを見ておくれよ、これから君達がどうなるかをこれを使って教えてあげるから」 そう言うと男は、二匹の前に同じ容器を置いた。 ただ違う事と言えば、中には一匹の子ゆっくり、子れいむが入っていた。 「ゆんやー!おちょーしゃん!おかーしゃん!はやくれーみゅをたしゅけちぇー!」 「ゆわぁぁぁ!おちびちゃん!やいくそじじい!はやくおちびちゃんを、そこからだすんだぜ! それから、ほかのおちびちゃんは、どこにやったんだぜ?いいかげんにしないと、まりさはおこるんだぜ?!」 「ゆわぁぁぁ!おちびちゃん!それよりも、れいむをここからだしてね!それからあまあまちょうだいね! あまあまをくれたら、おちびちゃんと、まりさをだしてあげてね!」 まりさよりも、れいむの方がゲス度が高いのか、我が子の身を心配するまりさとは異なり、自分が第一優先のれいむ。 そんな様子を特に気にする事もなく、男は淡々と子れいむの蓋のコックを回し始める。 「おちびちゃん!はやくそこからにげるんだぜぇぇぇ!!」 「まりさ!はやくおちびちゃんをたすけてあげてね!それから、このくそじじいをやっつけて、あまあまもってきてね!」 「ゆぅぅ?!おちょーしゃん、おかーしゃん、どうしちゃの?なんでたしゅけちぇくれないにょー?!」 子れいむに向かって無茶な注文をするまりさ。 れいむはそれ以上に無茶な注文をまりさにしていた。 男はさらにコックを回していく。 圧し蓋はどんどん下がっていき、ついに子れいむの頭上に達した。 「ゆぴょ?!ゆぐぐぐぐ…これなんにゃのぉぉぉ?!」 頭に圧し蓋が触れると同時に、身を低くする子れいむ。 だが、それを許さないかのように、男はさらに圧し蓋で子れいむを圧迫する。 少し潰れるような格好で動けなくなった子れいむは、泣きながら親に助けを求めた。 「ゆんやぁぁぁぁ!おちょーしゃ!おかーしゃ!くるちーよぉぉぉぉ!はやくたすけちぇぇぇぇ!! ここはゆっくちできにゃいぉぉぉぉぉ!!」 「ゆっがぁぁぁぁ!なにをしているんだぜ!はやくおちびちゃんを、そこからだすんだぜぇぇぇ!!」 「おちびちゃん!!なにしてるの、くそにんげん!はやくれいむをここからだしてねぇぇぇ!!」 そこで一旦、男は手を止めた。 そして子れいむの顔が良く見える様に、子れいむの容器を二匹の容器に近づける。 「お別れは済んだかい?じゃあ、ここから一気に潰していくから、よく見ていてね」 男は二匹に優しくそう言うと、再び子れいむの圧し蓋を下に下げていった。 「ゆぎぎぃぃぃぃ!いだいぃぃぃぃぃ!くるちぃぃぃぃぃ!れーみゅが…きゃわいいれーみゅが、ちゅぶれるぅぅぅぅ!!」 「ゆわぁぁぁ!おちびちゃん!おちびちゃん!ゆっくりしてね!ゆっくりしてね!やめろ、くそじじい! はやくおちびちゃんを、たすけろぉぉぉぉ!!」 「ゆっがぁぁぁ!どうなってるのぉぉぉぉ?!れいむにの、かわいいおちびちゃんがぁぁぁぁ!!」 少しずつ、確実に潰れていく子れいむ。 ようやく、自分似の子れいむが危ない事を理解したれいむは、あわてて子れいむの身を案じる。 一方、我が子を助ける事が出来ないまりさは、男に向かって必死に罵声を浴びせる。 このまりさは自分の強さに自信があった。 故に罵声を浴びせ続ければ、男は自分に恐怖し、自分の言う事に従うだろうと考えていた。 だがそんな考えも空しく、子れいむは確実に潰されていく。 「ゆっびょぅぅぅぅぅ!このくぞおやがぁぁぁ!どぼじでたしゅけでくれないのぉぉぉぉぉ!! ゆぐぎぎぎぎぎぎっ!………ぎっべぇえぇぇぇぇ?!」 壁際に居たおかげで、目玉は飛び出さなかったが、 あにゃると口から大量の餡を噴出し、子れいむは昇天した。 「ゆっ!……………………ゆっがぁぁぁぁぁぁ!!おちびちゃんがぁぁぁぁぁぁ?!」 「くぞじじいのくぜにぃぃぃぃぃぃぃ!!よくもれいむにの、かわいいおちびちゃんをぉぉぉぉぉ!!」 二匹は目の前で無残に潰された子れいむを見て、その怒りと悲しみを男にぶつけていた。 だが、男は特に気にする様子もなく二匹に話しかける。 「はいはい、ゆっくり、ゆっくり………で、君達がこれからどうなるか、なんとなく解ったかい? 君たち風に言えば、『ゆっくり、りかいできた?』………なんてね」 自分達の子供を殺しておいて、なおも平然としている男にさらに腹を立てる二匹。 男に向かって、半分言葉にもなっていない様な罵声を浴びせ続ける。 そんな様子に流石に五月蝿いと思ったのか、男は一瞬顔をしかめた。 「ちょっと君たちは五月蝿いね、少し静かにしてくれないかな?」 男は優しく笑いかけながらそう言うと、二匹の漬物器を締め上げていった。 「ゆっぎぃぃぃぃ!ぐるじいぃぃぃぃ!やめろぉぉぉぉ!やめてぇぇぇ!やめてくださいぃぃぃぃ!!」 「ゆっぎゃぁぁぁ!たすけでぇぇぇぇ!くるじぃよぉぉぉぉぉ!ゆっくりできないぃぃぃぃ!!」 「苦しいのが嫌だったら、少し静かにしててくれないかな?理解出来る?」 「「ゆっくりりかいじばじだぁぁぁぁぁ!!」」 両目を大きく見開き、歯を食いしばりながら、二匹は声をそろえて叫んだ。 男はそれに満足したように微笑むと、二匹に向かって問い掛けた。 「じゃあ、理解してくれた所で、色々聞くけど良いかな?」 「ゆん!なんなんだぜ、くそにんげん!」 「ちょっと言葉遣いが悪いね…もう少し苦しんでみるかい?」 「ゆっひぃ!ごめんなざい、にんげんさん!な、なんでしょうか?」 あっさりと態度を変えるまりさ。 れいむも苦しいのは嫌なのか、ただ黙ってその様子を見守った。 「君達はどうやって、この家に入って来たんだい?さなえに聞ければ良いんだけれど、 それも出来なくなってしまったからねぇ…」 悲しそうにそう呟く男。 まりさは、拙いながらもこの家にやって来た経緯を話し始めるのだった。 男は根気良くまりさの話に耳を貸した。 まりさの話によれば、まりさ一家はこの家を見つけて、中に進入しようとしたがガラス戸が硬くて割れなかった。 困り果てている所に、家の中にいるさなえに気がついた。 まりさは自分の子供の具合が悪いからと嘘をつき、家の中で休ませて貰える様にさなえに頼んだ。 当然さなえも最初は断ったのだが、野良一家があまりにも可愛そうに見えたため、 つい同情してしまい、ゆっくり用入り口の扉の鍵を開けてしまったようだ。 「………と、いうわけなんですぅぅ!さなえがばかだった…いえ、さなえのせいで、 このおうちに、はいることができたんですぅぅぅ!」 「なるほどね…確かにさなえは少々間抜けなところがあったようだね」 「ゆ!そうなんだぜ!あのさなえは、おおばかだったんだぜ!」 男がまりさの主張に同意すると、途端に調子に乗り出すまりさ。 だが、男はそんなまりさを静かに睨みつける。 「だけど、君達はそれ以上の大馬鹿のようだね。 さなえさえ無事だったら、君達にこんな事はしなかったのに…」 そう言うと男は、まりさの漬物器を締め付け始めた。 「じゃあ、もう一つ聞くけど、なんでさなえを攻撃したんだい?」 「そ、それは…さなえにはわるいけど、まりさたちはすてきなおうちが、ほしかったんだぜ! さなえには、うらみはないけどしかたないのぜ!だからやめてほしびぎぃ! おねがいじまずぅぅぅぅ!!」 「そうか…でも僕には恨みしかないよ…」 男はさらに漬物器を締め付ける。 「ゆっぎぃぃぃ!なんでぇぇ?!どぼじでこんなこどするのぉぉぉぉ?!ゆっぎょぶぅぅぅぅ!!」 「やめてね!まりさがくるしがっているよ!だから、さっさとれいむをたすけてね!おねがいだよ!」 「何言ってるんだい? どうしてだって? それは、君達が先に僕の飼いゆっくりに手を出したのが悪いんじゃないか… それさえなければ、こんな事はしなかったのに……… ……………………こんな感情に目覚めなかったのにね………」 「「ゆっひぃ!!」」 突き刺さる様などす黒い殺意に、二匹は本能的に気が付き、 そして恐怖した。 男はまりさの漬物器を締め上げるのを止めて一旦部屋を出ると、今度は子まりさを連れて戻ってきた。 子まりさは男に乱暴に握られており、痛いのか苦しいのか、泣きながら必死に親に向かって助けを求めていた。 「ゆびぇぇぇぇぇん!こわいのじぇぇぇぇ!おちょーしゃん、おかーしゃん!たすけちぇほしいのじぇぇぇぇぇぇ!!」 強く握られている為に、その体はなすび状に変形しており、 唯一自由が利く底部の方を必死にブリブリと動かしていた。 「にんげんさん!やめてください!おちびちゃんに、ひどいことしないでほしいんだぜ!」 「ゆわぁぁぁ!おちびちゃんがぁぁ!まりさにの、かわいくない、おちびちゃんがぁぁぁぁ!!」 先程とは一転して、すっかり態度が変わってしまったまりさ。 必死に男に呼びかけるが、男は相変わらず優しい顔で微笑んでいた。 だが、その笑顔を見てもまりさは決してゆっくり出来なかった。 男は片手で器用に潰れた子れいむの入った漬物器の蓋をはずすと、 その中に握っていた子まりさを叩き付ける様に投げ入れた。 「ゆっぴぃ!ゆびゃぁぁぁん!おかおがいたいのじぇぇぇぇぇ!ゆっくちできにゃいのじぇぇぇぇぇ!!」 先程よりも一掃大きな声で泣き喚く子まりさ。 叩きつけられたショックか、痛みからか、しーしーも一緒に垂れ流していた。 男は圧し蓋を一番上まで撒き戻すと、子まりさの入った漬物器の蓋を閉めた。 「やめてください、にんげんさん!おちびちゃんに、ひどいことしないでくださいぃぃぃ!」 「やめてね!れいむにひどいことしないでね!おちびちゃんと、まりさはついででいいよ!」 相変わらず、自分優先のれいむ。 男はそんなれいむを冷ややかに見つめながら、優しくまりさに話しかける。 「おちびちゃんを助けてほしいのかい?」 「と、とうぜんだよ!ゆっくりたすけてあげてね!」 「それはいいけど、でも只って訳にはねぇ………」 男は優しく笑いながらまりさを見つめる。 「ゆっ!ゆぅ…そ、それならまりさを、なぐっていいんだぜ!きのすむまで、まりさをなぐっていいんだぜ! それで、ごめんなさいにしてほしいんだぜ!」 まりさは必死に男に訴えた。 男はそんなまりさを興味深そうに見つめる。 「ごめんなさいって、君は悪い事したと思っているのかい?」 「ゆっ!ゆぅ…さ、さなえには、ひどいことをしてしまったんだぜ」 「本当にそう思っているのかい?」 男はまりさの目を見つめながらそう言った。 まりさも、男に悲願する様なまなざしを向ける。 「そうだよ、だからまりさが、おちびちゃんのかわりに、せいさいさせるんだぜ! それで、ゆっくりごめんなさいなんだぜ!」 男はそんなまりさを見て鼻で笑った。 「何か勘違いしていないかい?僕は別に謝罪の言葉が聞きたいんじゃないんだよ。 僕は君達がもっと苦しむ姿が見たくなったんだよ。 もっと泣き叫ぶ姿が見たくなったんだよ。 だからさ……… 親子そろって苦しんでいってくれないか?」 「ゆ?…………」 男はそう言うと、まりさ親子の漬物器を締め付けていった。 「ぎっぎぎぎ…ゆげぼっ…がが…ぎ…げ……げげ…ぼうやべ……げげ…げ………ごべんなざ……ざ…」 「ゆんやー!まりちゃ、ゆっくちはねられないのじぇぇぇぇ!」 先程よりも、大分圧し潰れてきたまりさ。 両目を見開きだらしなく泣いている。 餡を吐きたくても、プラスチックの壁に阻まれて、餡を吐く事が出来ない。 同様に、あにゃるからも餡の放出はされなかった。 それ故に生き長らえてはいるものの、それが更なる苦痛をまりさに与えていた。 一方子まりさの方は、潰れた子れいむを見て驚き逃げ回っていたのだが、 迫り来る蓋のせいで思うように跳ねられず、必死で泣き喚いていた。 そんな様子を見ながら、れいむは必死にブツブツと 「れいむだけはたすけてください」 だの、 「ごめんなさい」 だのと、意味もなく繰り返し呟いていた。 そんな様子に気がついた男は一旦手を止めて、れいむに語りかける。 「君はさっきから自分の事ばかりだね…そんなに自分が可愛いの?」 「ゆ?!………と、とうぜんだよ!れいむはこのよで、いちばんかわいいんだよ!」 れいむは先程の恐怖も忘れたかの様に、自信たっぷりにそう言った。 「そうか…ふーん………で、君は、悪い事したと思ったりしているのかい? それとも、ただ、助けて欲しいだけなのかい?」 「ゆゆ?!なにいってるの?れいむはなんにも、わるいことなんてしてないよ! でも、じじいはれいむをいじめるんだよ!だから、ゆっくりたすけてね!」 まるで何も悪い事をしてないかの様な態度をとるれいむ。 男はそんなれいむを見て、一掃楽しそうに微笑んだ。 「いい根性だね、気に入ったよ……… なんだか、徹底的に苛めてみたくなったよ」 「ゆ?………ゆっひぃぃぃぃぃぃぃ!」 男の笑顔を見て、一掃怯えるれいむだった。 その後、男はれいむを漬物器から無理やり取り出した。 元々が太っていた上に、それを押し込める形で圧縮していたので、取り出すのには苦労を要した。 その際に、多少れいむの皮が破れたりもしたが、男は特に気にもせず、そのままれいむの足を焼いた。 その上で、効果はないだろうと思いつつも、目の前で一匹残っていた子れいむをいびり殺した。 れいむは男の予想通り、自分の身を案じるだけという結果に終わった。 そこで男は、れいむの目の前に大きな鏡を用意した。 れいむは鏡の中の自分を見ると、品定めするかの様に、隅々まで観察し始めた。 「ゆゆ!なんなの、このれいむは?!なんだかゆっくりできないれいむだね!」 自分の姿を見てそう呟くれいむ。 たしかに、鏡に映ったれいむの姿は、お世辞にも「ゆっくりした」れいむとは言えるものではなかった。 少し変形したままの頭部。 押しつぶされて、歪んだままのリボン。 でっぷりと肥った上に、所々傷だらけで、薄汚れた体。 そんな自分の姿を見て鼻で笑っていた。 「いや、ゆっくり出来ないっていってもね…それは君自身なんだよ?」 「ゆゆ?!なにいってるの?れいむは、こんなにきたなくなはいよ!こんなゆっくりできない、ゆっくりじゃないよ!」 男の発言に、少し怒り気味のれいむ。 これまで酷い目に合わされてきたにも拘らず、未だに強気の態度であった。 「いや、だってさ、ほら、よく見てみなよ。あのりぼんは、れいむのリボンじゃないのかい?」 「ゆん?おりぼんさん?」 れいむはそう言われ、改めて鏡の中のれいむのリボンを見つめる。 薄汚れて変形してるものの、そのリボンには見覚えがあった。 確かにそれは自分のリボン、自分の半身であった。 その事に気がつくと、れいむは鏡の自分に向かって怒り出した。 「やい!そこのくそれいむ!どうしておまえが、れいむのこうきな、おりぼんさんをもっているのぉぉぉぉ?!」 男はそんなれいむを見て、堪らず笑い出した。 「はっはっは!君は面白いなぁ、君のリボンはちゃんと頭に付いているだろう?」 男はれいむの頭のリボンを毟り取って、目の前に放った。 「ゆん!なにするくそじじ……い?………」 れいむは目を白黒させながら、目の前のリボンと鏡に映ったリボンを見比べる。 「…ど、どうなっているのぉぉぉぉ?!」 「ふふふ…君は鏡に映った自分の姿を見て、ゆっくり出来ないだの、汚いだのって言ってたんだよ」 男は笑いを堪えながら、なおも続けた。 「どう?少しは自分が見えてきたかい?」 「な、なにいってるの?これはなにかのまちがいだよ!いいかげんにしてね!」 「間違いって言うなら、君の存在が間違いかもね。」 「なにいってるのぉぉぉ!れいむはまちがってなんかないよぉぉぉぉ!じじいが、いじわるしてるだけだよぉぉぉ!!」 男の物言いに、負けじとれいむも応戦する。 だが、男はそんなれいむが可笑しいのか、笑いながらも話を続けた。 「ふふふ…確かに、僕は意地悪かもしれないね…くっくっく…でもね、それは君達がわるいんじゃないか… 君達がこの家にやってきたのが間違いだったんだよ。はっはっは………」 「ゆぅ…なにをいって………」 「こんな目に遭いたくなければ、ここに来なければ良かったじゃないか… こんな思いをしたくなければ、ここに来なければ良かったじゃないか… こんな目に遭いたくなければ、生まれてこなければ良かったんじゃないの? こんな思いをしたくなければ、生まれてこなければ良かったんじゃないの? そうすれば、僕等は出会うことはなかった、僕は目覚める事はなかった。」 「なにいってるのぉぉぉ!れいむはゆっくりしているだけだよ! ゆっくりしたいだけだよ!それをみんなが、じじいがいじめるんだよ! じゃまするんだよぉぉぉぉ!! れいむだっていきているんだよぉぉぉぉぉ!!」 「だからそれが間違いなんじゃないのかい? れいむがれいむとして生まれてきたから、こんな目に合うんだって… それにさ…僕は、元々ゆっくりを苛めたりはしない人間だったんだよ。 それが、君達が僕の家にやってきたから…僕の飼っていたさなえを……… だから、君達に殺意が芽生えたんだよ…苦しめてから殺してやろうってね… でも、君達を苛めているうちに、なんだか楽しくなってきてね」 「ゆ?……ゆ?………?…ゆ??…………」 れいむは己の思考が追いつかなくなったのか、ただ、「ゆ…ゆ…」と繰り返すだけだった。 男はそんなれいむを気にしていないのか、さらに続ける。 「でも、まさか君達みたいなプライドの高いゆっくりを苛めるのが、こんなに楽しいなんて思わなかったよ。 だからお礼を言わせてくれ………」 「ゆ?」 「れいむにまりさ、本当にありがとう」 「……………ゆ!」 「お礼にたっぷり苦しめてから殺してあげるよ…何が良いかな?… もう一度漬物気分を味わってみるかい?それとも、コンポストってやつになってみる? それとも………」 すでにれいむは、男の声が聞こえていなかった。 れいむはゆっくりなりに、足りない頭を絞って考えていた。 なぜ、こんな事になった? なぜ、この人間はれいむを苛める? なぜ、この人間はれいむをゆっくりさせない? なぜ、この人間はれいむにお礼を言った? なぜ、この人間はれいむを苛めるようになった? なぜ? なぜ? なぜ?……… なぜ?…… なぜ?… そして一つの結論にたどり着いた。 「そうだね…せっかくだから、いろいろやってみようか?ね、れいむ?」 れいむは男の問い掛けには答えようとはしなかった。 いや、れいむは聞き取れないほどの声で、何かをブツブツと喋っていた。 「れいむ?どうしたんだい?」 「………………………カッタノ?……キタノガワルカッタノ?…………?」 さすがに男も不審に思い、れいむの様子を見守る。 しばらくすると、れいむは再び鏡に映った自分を見つめる。 そして、狂ったように叫びだした。 「このくそれいむがぁぁぁぁ! れいむがうまれてきたせいで! れいむがうまれてきたせいでぇぇぇぇ!! だかられいむが、こんなひどいめにあうんだよぉぉぉぉ! つらいおもいをしているんだよぉぉぉぉ!! このくそれいむがぁぁぁぁぁ! せいっさいっしてやるよぉぉぉぉぉぉ!!」 それからしばらくの間、れいむは鏡の自分に向かって叫び続けた。 男はそれをしばらく興味深そうに見ていたが、5分もしない内に飽きてしまった。 れいむの叫びは、自問自答の末に辿り着いた結論なのか。 自分に責任がないと思い込みたいがために、鏡の自分に向かって叫んでいるのか。 自己保護のために、仮想敵を作り出して叫んでいるのか。 それはれいむにしか解らない。 ただ、確かなのは、れいむは壊れてしまった。 「いやー色々助かったよ。まさか、さなえも無事復活するとは思わなかったし…いろいろありがとう」 「完全復活って訳でもないだろう?怪我が治ったのは良いけど、反動で『ゆるさなえ』になってしまったみたいだし」 男は友人と話をしていた。 その手の中にはさなえが、いや、ゆるさなえが得意そうな顔をしている。 「でも、俺の知識とか、ゆ虐経験が役に立って良かったよ。 それにしても、昔はあんなに喧嘩したりしてたのになぁ…」 「まったくだよ…」 そう、男と友人は古くからの知り合いであったが、ゆっくり愛で派と虐待派で度々口論になっていた。 ところが、男の家に野良がやってきて、飼いゆっくりのさなえが瀕死にされた事からこの友人を頼より、 結果として、仲良くなってしまったのだ。 「それにしても、お前のおかげで面白い物が見れたよ。 色々話を聞かせてもらったけどさ、あのれいむって『でいぶ』だよな?」 「だったのかな?」 「いや、『でいぶ』だろうあれは…それがさ、特に痛めつける訳でも、お飾りを壊す訳でもないのに あそこまでの廃ゆっくりにしてしまうなんてな………お前、けっこうなSだろう?」 突然、虐待の先輩である友人にそんな事を言われ、少々ムッとする男。 「そうかな?君ほどでもないと思うけど…」 「だってさ、あの一家を飽きちゃったからって俺の所に持ってきた時は本当に驚いたって。 親まりさは変な汁出して、生きながら本物の漬物っぽくなってるし、 子まりさは死ぬほどゆっくりできない顔で、芋虫のように這うことしか出来なかったし。 それに、あの壊れでいぶだろ?お前、最高だよ!才能あるよ!」 「それって褒めてるの?あまり嬉しくないんだけど…」 男は面白くなさそうにそう言う。 それに友人が気が付いたのか、すかさずフォローに入る。 「まあ、気にするなって…でさ『ゆるさなえ』なんだけどな… それって確か、れいむ種を妙に嫌っててな… でさ…その『ゆるさなえ』とれいむを戦わせて見たいとか思わないか?」 「それ本当なのか?面白そうだな…」 「ゆるさなえ!」 そんな友人の言葉に、目を輝かせる男とゆるさなえであった。 些細なきっかけで、一人の鬼と狂戦士を目覚めさせてしまったれいむと野良一家。 やはり男の言う通り、彼女たちは生まれて来るべきではなかったのだろうか? 何はともあれ、楽しそうに語らう男二人とゆっくり一匹であった。 完 作者は実は漬物器を使った事がありません。 実家にあるのを見て、ゆ虐に使えそうなアイテムだと思ったのでやってみました。 故に漬物器の各パーツの名称が違っていたらすみません。